公認野球規則

1.00 試合の目的

1.01 野球は、囲いのある競技場で、監督が指揮する9人のプレーヤーから成る二つのチームの間で、1人ないし数人の審判員の権限のもとに、本規則に従って行われる競技である。

1.02 攻撃側は、まず打者が走者となり、走者となれば進塁して得点することに努める。

1.03 守備側は、相手の打者が走者となることを防ぎ、走者となった場合は、その進塁を最小限にとどめるように努める。

1.04 打者が走者となり、正規にすべての塁に触れたときは、そのチームに1点が記録される。

1.05 各チームは、相手チームより多くの得点を記録して、勝つことを目的とする。

1.06 正式試合が終わったとき、本規則によって記録した得点の多い方が、その試合の勝者となる。

2.00 競技場

2.01 競技場の設定

競技場は、次にしるす要領により、巻頭1、2、3図のように設定する。

まず、本塁の位置を決め、その地点から二塁を設けたい方向に、鋼鉄製巻尺で、127㌳3⅜㌅(38.795㍍)の距離を測って二塁の位置を定める。次に本塁と二塁を起点としてそれぞれ90㌳(27.431㍍)を測り、本塁から向かって右側の交点を一塁とし、本塁から向かって左側の交点を三塁とする。したがって、一塁から三塁までの距離は127㌳3⅜㌅となる。

本塁からの距離は、一塁線と三塁線との交点を基点として測る。

本塁から投手板を経て二塁に向かう線は、東北東に向かっていることを理想とする。

90㌳平方の内野を作るには、まず各ベースライン(塁線)およびホームプレート(本塁)を同一水平面上に設け、続いて内野の中央付近に投手板をホームプレートより10㌅(25.4㌢)高い場所に設け、投手板の前方6㌅(15.2㌢)の地点から、本塁に向かって6㌳(182.9㌢)の地点まで、1㌳(30.5㌢)につき1㌅(2.5㌢)の傾斜をつけ、その傾斜は各競技場とも同一でなければならない。

本塁からバックストップまでの距離、塁線からファウルグラウンドにあるフェンス、スタンドまたはプレイの妨げになる施設までの距離は、60㌳(18.288㍍)以上を推奨する。(1図参照)

外野は、1図に示すように、一塁線および三塁線を延長したファウルラインの間の地域である。本塁よりフェアグラウンドにあるフェンス、スタンドまたはプレイの妨げになる施設までの距離は250㌳(76.199㍍)以上を必要とするが、両翼は320㌳(97.534㍍)以上、中堅は400㌳(121.918㍍)以上あることが優先して望まれる。

境界線(ファウルラインおよびその延長として設けられたファウルポール)を含む内野および外野は、フェアグラウンドであり、その他の地域はファウルグラウンドである。

キャッチャースボックス、バッタースボックス、コーチスボックス、スリーフット・ファーストベースラインおよびネクスト・バッタースボックスは巻頭1、2図のように描く。

図表中のファウルラインおよび太線で示されている諸線は、塗料、または無害かつ不燃性のチョーク、その他の白い材料で描く。

巻頭1図のグラスライン(芝生の線)および芝生の広さは、多くの競技場が用いている規格を示したものであるが、その規格は必ずしも強制されるものではなく、各クラブは任意に芝生および芝生のない地面の広さや形を定めることができる。

ただし、内野の境目となるグラスラインは、投手板の中心から半径95㌳(28.955㍍)の距離とし、前後各1㌳については許容される。しかし、投手板の中心から94㌳(28.651㍍)未満や96㌳(29.26㍍)を超える箇所があってはならない。

【注】我が国では、内野の境目となるグラスラインまでの距離については、適用しない。

【軟式注】学童部では、投手板と本塁間および各塁間の距離を次のとおりとする。塁間の距離は23㍍。投手板と本塁との距離は16㍍。

2.02 本塁

本塁は五角形の白色のゴム板で表示する。この五角形を作るには、まず1辺が17㌅(43.2㌢)の正方形を描き、17㌅の1辺を決めてこれに隣り合った両側の辺を8½㌅(21.6㌢)とする。それぞれの点から各12㌅(30.5㌢)の2辺を作る。12㌅の2辺が交わった個所を本塁一塁線、本塁三塁線の交点に置き、17㌅の辺が投手板に面し、二つの12㌅の辺が一塁線および三塁線に一致し、その表面が地面と水平になるように固定する。(巻頭2図参照)

2.03 塁

一塁、二塁、三塁は、白色のキャンバスまたはゴムで被覆されたバッグで表示し、巻頭2図に示すように地面に正しく固定する。

一塁と三塁のバッグは、完全に内野の内に入るように設置し、二塁のバッグは、図表の二塁の地点にその中心が来るように設置する。

キャンバスバッグはその中に柔らかい材料を詰めて作り、その大きさは18㌅(45.7㌢)平方、厚さは3㌅(7.6㌢)ないし5㌅(12.7㌢)である。

【注】我が国では、一塁、二塁、三塁のキャンバスバックの大きさは15㌅(38.1㌢)平方とする。

2.04 投手板

投手板は横24㌅(61.0㌢)縦6㌅(15.2㌢)の長方形の白色ゴムの平板で作る。投手板は巻頭1、2、3図に示す個所の地面に固定し、その前縁の中央から本塁(五角形の先端)までの距離は60㌳6㌅(18.44㍍)とする。

2.05 ベンチ

ホームクラブは、ホームチーム用およびビジティングチーム用として、各1個のプレーヤースベンチを設け、これには左右後方の三方に囲いをめぐらし、屋根を設けることが必要である。

3.00 用具・ユニフォーム

3.01 ボール

ボールはコルク、ゴムまたはこれに類する材料の小さい芯に糸を巻きつけ、白色の馬皮または牛皮2片でこれを包み、頑丈に縫い合わせて作る。重量は5㌉ないし5¼㌉(141.7㌘~148.8㌘)、周囲は9㌅ないし9¼㌅(22.9㌢~23.5㌢)とする。

【注1】我が国では牛皮のものを用いる。

【軟式注】軟式野球ボールは、外周はゴム製で、M号、J号、D号、H号の4種類がある。M号は一般用、J号、D号は少年用のいずれも中空ボールで、H号は一般用の充填物の入ったボールである。
ボールの標準は次のとおりである。(反発は150㌢の高さから大理石板に落として測る。M号、J号の20%圧縮荷重は、ボール直径の20%をつぶしたときの力を測る。)

【原注】ボールが試合中、部分的にはがれた場合には、そのプレイが完了するまで、ボールインプレイの状態は続く。

ボールの基準

プレーヤーが、土、ロジン、パラフィン、甘草、サンドペーパー、エメリーペーパー、その他のもので、ボールを故意に汚すことは禁じられる。

ペナルティ 審判員は、そのボールの返還を求め、反則した者を試合から除く。さらに、反則者は自動的に以後10試合の出場停止となる。ボールを傷つけた投手に関しては6.02(c)(2)~(6)、6.02(d)参照。

【注2】アマチュア野球では、このペナルティを適用せず、審判員が、その反則者に注意して、そのボールの返還を求めるにとどめるが、その後も、故意に同様の行為をくり返した場合には、試合から除く。

3.02 バット

(a)バットはなめらかな円い棒であり、太さはその最も太い部分の直径が2.61㌅(6.6㌢)以下、長さは42㌅(106.7㌢)以下であることが必要である。バットは1本の木材で作られるべきである。

 【付記】接合バットまたは試作中のバットは、製造業者がその製造の意図と方法とについて、規則委員会の承認を得るまで、プロフェッショナル野球(公式試合および非公式試合)では使用できない。

 【注1】我が国のプロ野球では、金属製バット、木片の接合バット及び竹の接合バットは、コミッショナーの許可があるまで使用できない。

 【注2】アマチュア野球では、所属する団体が連盟が公認すれば、金属製バット、木片の接合バット及び竹の接合バットの使用ができる。ただし、接合バットについては、バット内部を加工したものは使用できない。(6.03a5参照)

(b) カップバット(先端をえぐったバット)

 バットの先端をえぐるときには、深さ1¼㌅(3.2㌢)以内、直径1㌅以上2㌅(5.1㌢)以内で、しかもそのくぼみの断面は、椀状にカーブしていなければならない。なお、この際、直角にえぐったり、異物を付着させてはならない。

(C) バットの握りの部分(端から18㌅(45.7㌢))には、何らかの物質を付着したり、ザラザラにして握りやすくすることは許されるが、18㌅の制限を超えてまで細工したバットを試合に使用することは禁じられる。

 【付記】審判員は、打者の使用したバットが、打者の打撃中または打撃終了後に、本項に適合していないことを発見しても、打者にアウトを宣告したり、打者を試合から除いたりする理由としてはならない。

 【原注】パインタールが18㌅の制限を超えて付着していた場合は、審判員は、自らの判断や相手チームからの異議があれば、バットの交換を命じる。制限を超えた部分のパインタールが取り除かれた場合だけ、打者はその試合でそのバットを使用することができる。
バットの使用以前に指摘がなければ、本項に適合していないバットによるプレイはすべて有効である。

(d) プロフェッショナル野球では、規則委員会の許可がなければ、着色バットは使用できない。

 【注1】我が国のプロ野球では、着色バットの色については別に定める規定に従う。

 【注2】アマチュア野球では、所属する連盟、協会の規定に従う。

3.03 ユニフォーム

(a)同一チームの各プレーヤーは、同色、同形、同意匠のユニフォームを着用し、そのユニフォームには6㌅(15.2㌢)以上の大きさの背番号をつけなければならない。

(b)アンダーシャツは外から見える部分は、同一チームの各プレーヤー全員が同じ色でなければならない。
投手以外の各プレーヤーは、アンダーシャツの袖に番号、文字、記章などをつけることができる。

(c)自チームの他のプレーヤーと異なるユニフォームを着たプレーヤーは試合には参加できない。
【注】各プレーヤーはコートを着て競技にたずさわることはできない。ただし、ベースコーチと走者となった投手を除く。

(d)リーグは次のことを規定する。
(1)各チームは、常に独自のユニフォームを着なければならない。
(2)各チームは、ホームゲーム用として白色、ロードゲーム用として色物の生地を用いて作った2組のユニフォームを用意しなければならない。
【注】アマチュア野球では、必ずしもホームチームのときは白色、ビジティングチームのときは色物のユニフォームを着なくてもよい。

(e)各プレーヤーのユニフォームの袖の長さは、各人によって異なっていてもよいが、各自の両袖の長さは、ほぼ同一にしなければならない。
各プレーヤーは、その袖がボロボロになったり、切れたり、裂けたりしたユニフォームおよびアンダーシャツを着てはならない。

(f)各プレーヤーは、そのユニフォームの色と異なった色のテープまたはその他のものを、ユニフォームにつけることはできない。

(g)ユニフォームには、野球用ボールをかたどったり、連想させるような模様をつけてはならない。

(h)ガラスのボタンやピカピカした金属を、ユニフォームにつけることはできない。

(i)靴のかかとやつま先には、普通使われている部品以外のものをつけてはならない。ゴルフシューズ、または陸上競技用シューズに使われているスパイクに類似した、先のとがったスパイクをつけたシューズは使用できない。

(j)ユニフォームのいかなる部分にも、宣伝、広告に類する布切れまたは図案をつけてはならない。
【注1】我が国のプロ野球では、本項を適用しない。
【注2】アマチュア野球では、所属する連盟、協会の規定に従う。

(k)リーグは、所属するチームのユニフォームの背中にプレーヤーの名前をつけるように規定することができる。プレーヤーの姓以外の他の名前をつける場合は、リーグ会長の承認を必要とする。名前をつけることが決定した場合は、チーム全員のユニフォームにつけなければならない。
【注】アマチュア野球では、所属する連盟、協会の規定に従う。

3.04 捕手のミット

捕手の皮製ミットの重量には制限がない。その大きさは、しめひも、皮のバンドまたはミットの外縁につけられているふちどりも含めて外周で38㌅(96.5㌢)以下、ミットの先端から下端までは15½㌅(39.4㌢)以下でなければならない。ミットの親指の部分と人さし指の部分との間隔は、その先端で6㌅(15.2㌢)以下、親指の叉状の部分で4㌅(10.2㌢)以下でなければならない。
親指と人さし指との間にある網は、両指の先端をつなぐ部分の長さは7㌅(17.8㌢)以下、先端から親指の叉状の部分までの長さは6㌅以下に作る。網はひもで編んだものでも、皮革で被覆したひもで編んだものでも、または、手のひらの部分の延長となるように皮革をひもでミットに結びつけたものでもよいが、前記の寸法を超えてはならない。

3.05 一塁手のグラブ

一塁手の革製グラブまたはミットの重量には制限がない。その大きさは、縦が先端から下端まで13㌅(33.0㌢)以下、親指の叉状の部分からミットの外縁まで測った手のひらの幅が8㌅(20.3㌢)以下、ミットの親指の部分と人さし指の部分との間隔は、ミットの先端で4㌅(10.2㌢)以下、親指の叉状の部分で3½㌅(8.9㌢)以下でなければならない。この間隔は一定に保ち、皮以外のものを用いたり、特殊な方法で間隔を大きくしたり、伸ばしたり広げたり、深くすることは許されない。
親指と人さし指との間にある網は、その先端から親指の叉状の部分まで長さが5㌅(12.7㌢)以下になるように作る。網はひもで編んだものでも、革で被覆したひもで編んだものでも、または、手のひらの部分の延長となるような革をひもでミットに結びつけたものでもよいが、前記の寸法を超えてはならない。しかし、網のひもに革以外のものを巻きつけたり、ひもを革以外のもので包んだり、または網を深くしてわな(トラップ)のようなあみ形にすることは許されない。

3.06 野手のグラブ

捕手以外の野手の革製グラブの重量には制限がない。グラブの寸法を測るには、計測具または巻尺をグラブの前面またはボールをつかむ側に接触させ、外形をたどるようにする。その大きさは、縦が4本の指の各先端から、ボールが入る個所を通ってグラブの下端まで13㌅(33.0㌢)以下、手のひらの幅は、人さし指の下端の内側の縫い目から、各指の下端を通って小指外側の縁まで7¾㌅(19.7㌢)以下である。
親指と人さし指との間、いわゆる叉状の部分(クロッチ)に革の網または壁形の革製品を取りつけてもよい。網はクロッチをぴったりふさぐように2枚の普通の革を重ね合わせて作っても、トンネル型の革や長方形の革をつなぎ合わせて作っても、または革ひもを編んだもので作ってもよいが、わな(トラップ)のようなあみ形にするために革以外のものを巻きつけたり、革以外のもので包むことは許されない。網がクロッチをきっちりふさいだとき、網は柔軟性があってもさしつかえない。数個の部品をつなぎ合わせて網を作るにあたって、それぞれをぴったりとくっつけなければならない。しかし、部品をわん曲させてくぼみを大きくさせてはならない。網はクロッチの大きさを常に制御できるように作らなければならない。
クロッチの大きさは、その先端の幅が4½㌅(11.4㌢)以下、深さが5¾㌅(14.6㌢)以下、下端の幅が3½㌅(8.9㌢)以下である。網はクロッチの上下左右どの部分にでも、きっちりと取りつけられていなければならない。革のしめひもで結びつけられたものは、しっかりとつなぎ合わされ、伸びたりゆるんだりしたときには、正常の状態に戻さなければならない。

3.07 投手のグラブ

(a)投手のグラブは、縁取りを除き白色、灰色以外のものでなければならない。審判員の判断によるが、どんな方法であっても幻惑させるものであってはならない。
守備位置に関係なく、野手はPANTONEの色基準14番よりうすい色のグラブを使用することはできない。
【注】アマチュア野球では、投手のグラブについては、縁取り、しめひも、縫い糸を除くグラブ本体(捕球面、背面、網)は1色でなければならない。

(b)投手は、そのグラブの色と異なった色のものを、グラブにつけることはできない。

(c)球審は、自らの判断または他の審判員の助言があれば、あるいは相手チームの監督からの異議に球審が同意すれば、本来(a)または(b)項に違反しているグラブを取り替えさせる。

【全軟】「全軟野連発第 74 ー 1 号」により改訂あり

3.08 ヘルメット

プロフェッショナルリーグでは、ヘルメットの使用について、次のような規則を採用しなければならない。

(a)プレーヤーは、打撃時間中および走者として塁に出ているときは、必ず野球用ヘルメットをかぶらなければならない。

(b)マイナーリーグのプレーヤーは、打撃に際して両耳フラップヘルメットを着用しなければならない。

(c)メジャーリーグのプレーヤーは、片耳フラップヘルメット(プレーヤーが両耳フラップヘルメットを選んでもよい)を着用しなければならない。
【注】アマチュア野球では、所属する連盟、協会の規定に従う。

(d)捕手が守備についているときは、捕手の防護用のヘルメットを着用しなければならない。

(e)ベースコーチは、コーチスボックスにいるときには、防護用のヘルメットを着用しなければならない。

(f) バットボーイ、ボールボーイまたはバットガール、ボールガールは、その仕事にたずさわっているときは、防護用の両耳フラップヘルメットを着用しなければならない。

【3.08原注】審判員は各項に対する規則違反を認めた場合には、これを是正するように命じる。審判員の判断で、適宜な時間がたっても是正されない場合には、違反者を試合から除くことができる。

3.09 商業的宣伝

ベース、投手板、ボール、バット、ユニフォーム、ミット、グラブ、ヘルメットその他本規則の各条項に規定された競技用具には、それらの製品のための不適当かつ過度な商業的宣伝が含まれていてはならない。

製造業者によって、これらの用具にいるされる意匠、図案、商標、記号活字および用具の商品名などは、その大きさおよび内容において妥当とされる範囲のものでなければならない。

本条は、プロフェッショナルリーグだけに適用される。

【付記】製造業者が、プロフェッショナルリーグ用の競技用具に、きわだった新しい変更を企図するときには、その製造に先立ちプロ野球規則委員会にその変更を提示して同意を求めなければならない。
【注1】製造業者には、販売業者を含む。
【注2】製造業者(販売業者を含む)以外のものの宣伝は、いずれの競技用具にも一切つけてはならない。
【注3】①バットの表面の焼印などの内容およびサイズなどは後記の範囲内にとどめなければならない。
バットの先端部分には、バットモデルと、バットの品名、品番、材種のみを表示するものとし、マーク類は表示できない。
なお、これらの表示については、レーザー照射による文字入れを認める。
これらの表示は、バットの長さに沿って、縦5㌢以下、横9.5㌢以下の範囲内におさめ、文字の大きさは、それぞれ縦2㌢以下、横2㌢以下でなければならない。
握りに近い部分には、製造業者または製造委託者の名称を含む商標を表示するものとし、これらの表示は、バットの長さに沿って、縦6.5㌢以下、横12.5㌢以下の範囲内におさめなければならない。
前記商標などは、すべてバットの同一面に表示しなければならない。
②ユニフォーム(帽子、ストッキングを含む)、ベルト、ソックス、アンダーシャツ、ウィンドブレーカー、ジャンパー、ヘルメットの表面のいかなる部分にも商標などの表示をすることはできない。
③ミットまたはグラブに表示する商標は、布片、刺繍または野球規則委員会の承認を受けた樹脂製の成型物によるものとし、これを表示する個所は背帯あるいは背帯に近い部分、または親指のつけ根の部分のうちいずれか1カ所に限定し、その大きさは縦4㌢以下、横7㌢以下でなければならない。
マーク類を布片、刺繍または樹脂製の成型物、あるいはスタンプによって表示する場合(エナメル素材のように光る素材での表示は認められない)は、親指のつけ根に近い個所に限定し、その大きさは、縦3.5㌢、横3.5㌢以下でなければならない。
投手用グラブに商標およびマーク類を布片または刺繍によって表示する場合、その色は、文字の色を含み、すべて白色または灰色以外の色でなければならない。ただし、野球規則委員会が特に認めた場合は、この限りではない。
品名、品番、マーク類などスタンプによって表示する場合の色は、黒色または焼印の自然色でなければならない。
④手袋およびリストバンドに商標などを表示する場合は、1カ所に限定し、その大きさは14平方㌢以下でなければならない。
⑤以上の用具以外の用具のコマーシャリゼーションについては、本条の趣旨に従い、野球規則委員会がその都度、その適否を判断する。
【注4】本条は、アマチュア野球でも適用することとし、所属する連盟、協会の規定に従う。

3.10 競技場内の用具

(a)攻撃側プレーヤーは、自チームの攻撃中には、グラブ、その他の用具を競技場内からダッグアウトに持ち帰らなければならない。フェア地域とファウル地域とを問わず、競技場内には何物も残しておいてはならない。

(b)シフトを取るために、野手の守備位置を示す、いかなる印も競技場内につけてはならない。

4.00 試合の準備

4.01 審判員の任務

審判員は、試合開始前に、次のことをしなければならない。

(a)競技に使用される用具、およびプレーヤーの装具が、すべて規則にかなっているかどうかを厳重に監視する。

(b)塗料、チョーク、その他の白色材料で引かれた競技場の諸線(図表1、2の太線)が、地面または芝生からはっきりと見分けがつくようにできあがっているかどうかを確かめる。

(c)正規のボール(リーグ会長がホームクラブに対して、その個数および製品について証明済みのもの)を、ホームクラブから受け取る。審判員はボールを検査し、ボールの光沢を消すため特殊な砂を用いて適度にこねられていることを確認する。審判員は、その単独判断でボールの適否を決定する。
【注】 アマチュア野球では、ボールはホームチームまたは主催者が供給する。

(d)正規のボールを少なくとも1ダース、必要に応じてただちに使用できるように、ホームクラブが準備しているかどうかを確かめる。

(e)少なくとも2個のボールを予備に持ち、試合中、必要に応じてその都度、予備のボールの補充を要求する。これらのボールを、次の場合に使用する。
(1)ボールがプレイングフィールドの外へ出た場合。
(2)ボールが汚れた場合、あるいはボールがなんらかの理由で使えなくなった場合。
(3)投手がボールの交換を求めた場合。
【原注】 球審は、ボールデッドとなりすべてのプレイが終わるまでに投手にボールを手渡してはならない。フェアの打球または野手の送球がプレイングフィールドの外へ出た場合は、走者および打者が与えられた塁に達するまで、予備のボールを渡してプレイを再開してはならない。また、打者がプレイングフィールドの外へ本塁打を打ったときは、その打者が本塁を踏み終わるまで球審は、新しいボールを投手または、捕手に手渡してはならない。

(f)試合開始前に公認ロジンバッグが投手板の後方に置かれていることを確認する。

(g)球審は、暗くなったので、それ以降のプレイに支障をきたすと認めたときは、いつでも競技場のライトを点灯するように命じることができる。

4.02 監督

(a)クラブは試合開始予定時刻30分前までに、リーグ会長、または当該試合の球審に対して監督を指定しなければならない。

(b)監督は、プレーヤーまたはコーチにリーグの規約に基づく特別な任務を任せたことを、球審に通告することができる。
この通告があれば本野球規則は、この指名された代表者を公式のものとして認める。
監督は自チームの行動、野球規則の遵守、審判員への服従に関しては、全責任を持つ。

(c)監督が競技場を離れるときは、プレーヤー、またはコーチを自己の代表者として指定しなければならない。このような監督の代理者は監督としての義務、権利、責任を持つ。もし、監督が競技場を離れるまでに、自己の代理者を指定しなかったり、これを拒否した場合には、球審がチームの一員を監督の代理者として指定する。

4.03 打順表の交換

ホームクラブが試合の延期または試合開始の遅延をあらかじめ申し出た場合を除いて、1人ないし、数人の審判員は、試合開始予定時刻の5分前に競技場内に入り、ただちに本塁に進み、両チームの監督に迎えられる。

(a)まず、ホームチームの監督、または監督が指名した者が、球審に2通の打順表を手渡す。

(b)次に、ビジティングチームの監督、または監督が指名した者が、球審に2通の打順表を手渡す。

(c)球審に手渡される打順表には、各プレーヤーの守備位置も記載されなければならない。指名打者を使用する場合は、どの打者が指名打者であるのかを打順表に明記しなければならない。

(d)球審は、受領した打順表の正本が副本と同一であるかどうかを照合した後、相手チームの監督にそれぞれ打順表の副本を手交する。球審の手元にあるものが正式の打順表となる。球審による打順表の手交は、それぞれの打順表の確定を意味する。したがって、それ以後、監督がプレーヤーを交代させるには規則に基づいて行わなければならない。

(e)ホームチームの打順表が球審に手渡されると同時に、競技場の全責任は、各審判員に託される。そして、その時を期して、球審は天候、競技場の状態などに応じて、試合打ち切りの宣告、試合の一時停止あるいは試合再開などに関する唯一の決定者となる。
球審はプレイを中断した後、少なくとも30分を経過するまでは、打ち切りを命じてはならない。また球審はプレイ再開の可能性があると確信すれば、一時停止の状態を延長してもさしつかえない。

【4.03原注】球審は、試合開始の〝プレイ〟を宣告する前に、打順表における明らかな誤記を見つけた場合、まず誤記をしたチームの監督またはキャプテンに注意し、それを訂正させることができる。たとえば、監督が不注意にも打順表に8人しか記載しなかったり、同性の2人を区別する頭文字をつけないで記載した場合、球審がこれらの誤記を試合開始前に見つけたら、訂正されなければならない。明らかな不注意や試合開始前に訂正できる誤りのために、試合が始まってからチームが束縛されるべきではない。
球審は、いかなる場合でも、試合を完了するように努力しなければならない。試合完了の確信があれば、球審は、その権限において、30分にわたる〝一時停止〟を何度くり返しても、あくまで試合を続行するように努め、試合の打ち切りを命じるのは、その試合を完了させる可能性がないと思われる場合だけである。

【注】アマチュア野球では、次の試合に出場するプレーヤーがスタンドで観戦することを許す場合もある。

4.04 競技場使用の適否の決定権

(a)ホームチームだけが、天候、競技場の状態が試合を開始するのに適しているかどうかを決定する権限を持っている。ただし、ダブルヘッダーの第2試合の場合を除く。

【例外】 全日程が消化できず、そのリーグの最終順位が、実際の勝敗の結果によらずに決まることがないようにするために、最終の数週間、そのリーグに限って、本条の適用を中止する権限を、そのリーグの会長に全面的に付与することができる。たとえば、選手権試合の終期の節において、いずれか2チーム間の試合を延期したり、または挙行しなかったことが、リーグの最終順位に影響を及ぼすおそれのある場合には、そのリーグ所属チームの要請によって、本条によるホームチームに付与されている権限を、リーグ会長が持つことができる。
【注】 アマチュア野球では、本項を適用しない。

(b)ダブルヘッダーの第1試合の球審だけが、天候、競技場の状態がダブルヘッダーの第2試合を開始するのに適しているかを決定する権限を持っている。

4.05 特別グラウンドルール

観衆が競技場内にあふれ出ている場合、ホームチームの監督は、打球、送球が観衆内に入ったときはもちろん、不測の事態が生じた場合など、あらゆる点を考慮して、広範囲に及ぶグラウンドルールを作って、球審ならびに相手チームの監督に指示して承諾を求める。相手チームの監督がこれを承諾すれば、そのグラウンドルールは正規のものとなるが、万一承諾しないときは、球審はプレイに関する規則に抵触しない範囲内で、競技場の状態から推測して必要と思われる特別グラウンドルールを作成して、これを実行させる。

4.06 ユニフォーム着用者の禁止事項

ユニフォーム着用者は、次のことが禁じられる。

(1)プレーヤーが、試合前、試合中、または試合終了後を問わず、観衆に話しかけたり、席を同じくしたり、スタンドに座ること。

(2)監督、コーチまたはプレーヤーが、試合前、試合中を問わず、いかなるときでも観衆に話しかけたり、または相手チームのプレーヤーと親睦的態度をとること。

【注】アマチュア野球では、次の試合に出場するプレーヤーがスタンドで観戦することを特に許す場合もある。

4.07 安全対策

(a)試合中は、ユニフォームを着たプレーヤーおよびコーチ、監督、ホームチームによって公認されている報道写真班、審判員、制服を着た警官、ならびにホームチームの警備員、その他の従業員のほかは、競技場内に入ってはならない。

(b)ホームチームは、秩序を維持するのに十分な警察の保護を要請する備えをしておく義務がある。1人もしくは2人以上の人が試合中に競技場内に入り、どんな方法ででもプレイを妨害した場合には、ビジティングチームは、競技場からそれらの人々が退去させられるまで、プレイを行なうことを拒否することができる。
ペナルティ ビジティングチームがプレイを行なうことを拒否してから、15分を経過した後、なお適宜な時間をかけても競技場からそれらの人々が退去させられなかった場合には、球審はフォーフィッテッドゲームを宣告してビジティングチームの勝ちとすることができる。
【注1】ここにいう〝適宜な時間〟とは、球審の判断に基づく適宜な時間を意味する。
フォーフィッテッドゲームは、同僚との協議の末、球審がとる最後の手段であって、すべての手段が尽き果てた後に、初めてこれを宣告するもので、料金を払って試合を見にきているファンを失望させることは極力避けなければならない。
【注2】 アマチュア野球では、ホームチームに代わって大会主催者、連盟などがその責にあたる。

4.08 ダブルヘッダー

(a)(1)選手権試合は、1日2試合まで行なうことができる。サスペンデッドゲームを完了させるために、ダブルヘッダーとともに行なっても、本条項に抵触することにはならない。
(2)もし、同じ日に、一つの入場料で2試合が組まれている場合には、第1試合をその当日における正規の試合としなければならない。

(b)ダブルヘッダーの第2試合は、第1試合の完了後でなければ開始してはならない。

(c)ダブルヘッダーの第2試合は、第1試合の終了30分後に開始する。ただし、この2試合の間にこれ以上の時間(45分を超えないこと)を必要とするときは、第1試合終了時に、球審はその旨を宣告して相手チームの監督に通告しなければならない。
【例外】ホームクラブが特別な行事のために、2試合の間を規定以上に延長したいと申し出て、リーグ会長がこれを承認した場合には、球審はこの旨を宣告して、相手チームの監督に通告しなければならない。どの場合でも、第1試合の球審は、第2試合が開始されるまでの時間を監視する任にあたる。
【注】両チーム監督の同意を得れば、ダブルヘッダーの第2試合を、第1試合の終了後30分以内に開始してもさしつかえない。

(d)審判員は、ダブルヘッダーの第2試合をできる限り開始し、そして競技は、グラウンドコンディション、地方時間制限、天候状態などの許す限り、続行しなければならない。

(e)正式に日程に組まれたダブルヘッダーが、降雨その他の理由で、開始が遅延した場合には、開始時間には関係なく開始されたその試合がダブルヘッダーの第1試合となる。

(f)日程の変更により、ある試合をダブルヘッダーの一つに組み入れた場合は、その試合は第2試合となり、正式にその日の日程に組まれている試合が、第1試合となる。

(g)ダブルヘッダーの第1試合と第2試合の間、または試合が競技場使用不適のため停止されている場合、競技場をプレイに適するようにするため、球審は球場管理人およびその助手を指図することができる。
ペナルティ 球場管理人およびその助手が球審の指図に従わなかった場合には、球審は、フォーフィッテッドゲームを宣告して、ビジティングチームに勝ちを与えることが許される。(7.03c)

5.00 試合の進行

5.01 試合の開始

(a)ホームチームの各プレーヤーが、それぞれの守備位置につき、ビジティングチームの第1打者が、バッタースボックス内に位置したとき、球審はプレイを宣告し、試合が開始される。

(b)球審が〝プレイ〟を宣告すればボールインプレイとなり、規定によってボールデッドとなるか、または審判員が〝タイム〟を宣告して試合を停止しない限り、ボールインプレイの状態は続く。

(c)まず、投手は打者に投球する。その投球を打つか打たないかは打者が選択する。

5.02 守備位置

試合開始のとき、または試合中ボールインプレイとなるときは、捕手を除くすべての野手はフェア地域にいなければならない。

(a)捕手は、ホームプレートの直後に位置しなければならない。
故意の四球が企図された場合は、ボールが投手の手を離れるまで、捕手はその両足をキャッチャースボックス内に置いていなければならないが、その他の場合は、捕球またはプレイのためならいつでもその位置をはなれてもよい。
ペナルティ ボークとなる。(6.02a12参照)

(b)投手は、打者に投球するにあたって、正規の投球姿勢をとらなければならない。

(c)投手と捕手を除く各野手は、フェア地域ならば、どこに位置してもさしつかえない。
【注1】 投手が打者に投球する前に、捕手以外の野手がファウル地域に位置を占めることは、本条で禁止されているが、これに違反した場合のペナルティはない。
審判員がこのような事態を発見した場合には、速やかに警告してフェア地域に戻らせた上、競技を続行しなければならないが、もし、警告の余裕がなく、そのままプレイが行なわれた場合でも、この反則行為があったからといってすべての行為を無効としないで、その反則行為によって守備側が利益を得たと認められたときだけ、そのプレイは無効とする。

内野手の守備位置については、次のとおり規定する。
(ⅰ)投手が投手板に触れて、打者への投球動作および投球に関連する動作を開始するとき、4人の内野手は、内野の境目より前に、両足を完全に置いていなければならない。
(ⅱ)投手が打者に対して投球するとき、4人の内野手のうち、2人ずつは二塁ベースの両側に分かれて、両足を位置した側に置いていなければならない。
(ⅲ)二塁ベースの両側に分かれた2人の内野手は、投手がそのイニングの先頭打者に初球を投じるときから、そのイニングが完了するまで、他方の側の位置に入れ替わったり、移動したりできない。
ただし、守備側のプレーヤーが交代したとき(投手のみの交代は除く)は、いずれの内野手も他方の側の位置に入れ替わったり、移動してもかまわない。
イニングの途中で内野手として正規に出場したプレーヤーは、その交代後に投手が打者に投じるときから、そのイニングが完了するまで、他方の側の位置に入れ替わったり、移動したりできない。(そのイニングで、その後再び別の交代があった場合は除く)。
【原注】 審判員は、内野手の守備位置に関する本項の目的として、投手が投球する前に打者がどこへ打つのかを予測して、二塁ベースのどちらかの側に3人以上の内野手が位置するのを防ぐことであることに留意しなければならない。いすれかの野手が本項を出し抜こうとしたと審判員が判断した場合、次のペナルティが適用される。
ペナルティ 守備側チームが本項に違反した場合、投手の投球にはボールが宣告され、ボールデッドとなる。
ただし、打者が安打、失策、四球、死球、その他で一塁に達し、しかも他の全走者が少なくとも1個の塁を進んだときには、規則違反とは関係なく、プレイが続けられる。もし、本項に違反した後に、他のプレイ(たとえば、犠牲フライ、犠牲バントなど)があった場合は、攻撃側の監督は、そのプレイが終わってからただちに、違反行為に対するペナルティの代わりに、そのプレイを生かす旨を球審に通告することができる。

【注2】 我が国では、本項後段の内野手の守備位置については、適用しない。

5.03 ベースコーチ

(a)攻撃側チームは、攻撃期間中、2人のベースコーチ──1人は一塁近く、他は三塁近く──を所定の位置につかせなければならない。

(b)ベースコーチは、各チーム特に指定された2人に限られ、そのチームのユニフォームを着なければならない。

(c)ベースコーチは、本規則に従いコーチスボックス内にとどまらなければならない。ただし、コーチが、プレーヤーに「滑れ」「進め」「戻れ」とシグナルを送るために、コーチスボックスを離れて、自分の受け持ちのベースで指示することは、プレイを妨げない限り許される。ベースコーチは、用具の交換を除き、特にサイン交換がなされている場合などには、走者の身体に触れてはならない。

ペナルティ コーチは、打球が自分を通過するまで、コーチスボックスを出て、本塁寄りおよびフェア地域寄りに立っていてはならない。相手チーム監督の異議申し出があったら、審判員は、規則を厳しく適用しなければならない。審判員は、そのコーチに警告を発し、コーチスボックスに戻るように指示しなければならない。警告にもかかわらず、コーチスボックスに戻らなければ、そのコーチは試合から除かれる。加えて、リーグ会長が制裁を科す対象となる。

【注1】監督が指定されたコーチに代わって、ベースコーチとなることはさしつかえない。

【注2】アマチュア野球では、ベースコーチを必ずしも特定の2人に限る必要はない。

【注3】コーチがプレイの妨げにならない範囲で、コーチスボックスを離れて指図することは許されるが、たとえば、三塁コーチが本塁付近にまできて、得点しようとする走者に対して、「滑れ」とシグナルを送るようなことは許されない。

5.04 打者

(a)打撃の順序

(1)攻撃側の各プレーヤーはそのチームの打順表に記載されている順序に従って打たなければならない。

(2)試合中、打撃順の変更は認められない。しかし、打順表に記載されているプレーヤーが控えのプレーヤーと代わることは許される。ただし、その控えのプレーヤーは退いたプレーヤーの打撃順を受け継がなければならない。

(3) 第2回以後の各回の第1打者は、前回正規に打撃(タイムアットバット)を完了した打者の次の打順のものである。

(b)打者の義務

(1)打者は自分の打順がきたら、速やかにバッタースボックスに入って、打撃姿勢をとらなければならない。

(2)打者は、投手がセットポジションをとるか、またはワインドアップを始めた場合には、バッタースボックスの外に出たり、打撃姿勢をやめることは許されない。

ペナルティ 打者が本項に違反した際、投手が投球すれば、球審はその投球によってボールまたはストライクを宣告する。

【原注】 打者は、思うままにバッタースボックスを出入りする自由は与えられていないから、打者が〝タイム〟を要求しないで、バッタースボックスをはずしたときに、ストライクゾーンに投球されれば、ストライクを宣告されてもやむを得ない。
打者が打撃姿勢をとった後、ロジンバッグやパインタールバッグを使用するために、打者席から外に出ることは許されない。ただし、試合の進行が遅滞しているとか、天候上やむを得ないと球審がみとめたときは除く。
審判員は、投手がワインドアップを始めるか、セットポジションをとったならば、打者または攻撃側チームのメンバーのいかなる要求があっても〝タイム〟を宣告してはならない。たとえ、打者が〝目にごみが入った〟〝眼鏡がくもった〟〝サインが見えなかった〟など、その他どんな理由があっても、同様である。球審は、打者が打者席に入ってからでも〝タイム〟を要求することを許してもよいが、理由なくして打者席から離れることを許してはならない。球審が寛大にしなければしないほど、打者は打者席の中にいるのであり、投球されるまでそこにとどまっていなければならないということがわかるだろう。(5.04b4参照)
打者が打者席に入ったのに、投手が正当な理由もなくぐずぐずしていると球審が判断したときには、打者がほんの僅かの間、打者席を離れることを許してもよい。走者が塁にいるとき、投手がワインドアップを始めたり、セットポジションをとった後、打者が打者席から出たり、打撃姿勢をやめたのにつられて投球をはたさなかった場合、審判員はボークを宣告してはならない。投手と打者との両者が規則違反をしているので、審判員はタイムを宣告して、投手も打者もあらためて〝出発点〟からやり直させる。
以下はマイナーリーグだけに適用される〔原注〕の追加事項である。走者が塁にいるとき、投手がワインドアップを始めたり、セットポジションをとった後、打者が打者席から出たり、打撃姿勢をやめたのにつられて投球を果たさなかった場合、審判員はボークを宣告してはならない。打者のこのような行為は、バッターボックスルールの違反として扱い、5.04(b)(4)(A)に定められたペナルティを適用する。

(3) 打者が、バッタースボックス内で打撃姿勢をとろうとしなかった場合、球審はストライクを宣告する。この場合はボールデッドとなり、いずれの走者も進塁できない。
このペナルティの後、打者が正しい打撃姿勢をとれば、その後の投球は、その投球によってボールまたはストライクがカウントされる。打者が、このようなストライクを3回宣告されるまでに、打撃姿勢をとらなかったときは、アウトが宣告される。

【原注】 球審は、本項により打者にストライクを宣告した後、再びストライクを宣告するまでに、 打者が正しい打撃姿勢をとるための適宜な時間を認める。

(4) バッタースボックスルール

(A) 打者は打撃姿勢をとった後は、次の場合を除き、少なくとも一方の足をバッタースボックス内に置いていなければならない。この場合は、打者はバッタースボックスを離れてもよいが、〝ホームプレートを囲む土の部分〟を出てはならない。

(ⅰ) 打者が投球に対してバットを振った場合。

(ⅱ) チェックスイングが塁審にリクエストされた場合。

(ⅲ) 打者が投球を避けてバランスを崩すか、バッタースボックスの外に出ざるを得なかった場合。

(ⅳ) いずれかのチームのメンバーが〝タイム〟を要求し認められた場合。

(ⅴ) 守備側のプレーヤーがいずれかの塁で走者に対するプレイを企てた場合。

(ⅵ) 打者がバントをするふりをした場合。

(ⅶ) 暴投または捕逸が発生した場合。

(ⅷ) 投手がボールを受け取った後マウンドの土の部分を離れた場合。

(ⅸ) 捕手が守備のためのシグナルを送るためキャッチャースボックスを離れた場合。

打者が意図的にバッタースボックスを離れてプレイを遅らせ、かつ前記(ⅰ)~(ⅸ)の例外規定に該当しない場合、当該試合におけるその打者の最初の違反に対しては球審が警告を与え、その後違反が繰り返されたときにはリーグ会長が然るべき制裁を科す。マイナーリーグでは、当該試合におけるその打者の2度目以降の違反に対して、投手が投球をしなくても球審はストライクを宣告する。この際、ボールデッドで、走者は進塁できない。

【注】 我が国では、所属する団体の規定に従う。

(B) 打者は、次の目的で〝タイム〟が宣告されたときは、バッタースボックスおよび〝ホームプレートを囲む土の部分〟を離れることができる。

(ⅰ) 負傷または負傷の可能性がある場合。

(ⅱ) プレーヤーの交代

(ⅲ) いずれかのチームの協議

【原注】 審判員は、前の打者が塁に出るかまたはアウトになれば、速やかにバッタースボックスに入るよう次打者に促さねばならない。

(5) 打者は、正規の打撃姿勢をとるためには、バッタースボックスの内にその両足を置くことが必要である。

【規則説明】 バッタースボックスのラインは、バッタースボックスの一部である。

(c)打撃の完了

打者は、アウトになるか、走者となったときに、打撃を完了したことになる。

5.05 打者が走者となる場合

(a) 次の場合、打者は走者となる。

(1) フェアボールを打った場合。

【原注】 投球が地面に触れた後、打者がこれを打ってバットに当たった場合には、インフライトの投球を打ったときと同様に扱う。

(2) (A)走者が一塁にいないとき、(B)走者が一塁にいても2アウトのとき、捕手が第3ストライクと宣告された投球を捕らえなかった場合。

【原注】 第3ストライクと宣告されただけで、まだアウトになっていない打者が、気が付かずに、一塁に 向かおうとしなかった場合、その打者は〝ホームプレートを囲む土の部分〟を出たらただちにアウトが宣告される。

(3) 投球が地面に触れた後、ストライクゾーンを通過しても、ボールであり、このバウンドした投球が打者に触れた場合は、球審の裁定で打者に一塁を与える。ただし、2ストライク後打者が打ったがバットに当たらなかったときは、捕手がそのままつかんでも〝捕球〟したものとはみなされない。(5.05b2、5.09a3)

(4) 野手(投手を除く)を通過したか、または野手(投手を含む)に触れたフェアボールが、フェア地域で審判員または走者に触れた場合。(走者については、6.01a11参照)

(5) フェア飛球が、本塁からの距離が250㌳(76.199㍍)以上あるフェンスを越えるか、スタンドに入った場合、打者がすべての塁を正規に触れれば、本塁打が与えられる。
フェア飛球が、本塁からの距離が250㌳(76.199㍍)未満のフェンスを越えるか、スタンドに入った場合は、二塁打が与えられる。

(6) フェアボールが、地面に触れた後、バウンドしてスタンドに入った場合、またはフェンス、スコアボード、灌木およびフェンス上のつる草を抜けるか、その下をくぐるか、挟まって止まった場合には、打者、走者ともに2個の進塁権が与えられる。

【注】 〝地面に触れた〟とあるのは、インフライトでない状態を指す。

(7) フェアボール(地面に触れたものでも、地面に触れないものでも)が、フェンス、スコアボード、灌木およびフェンス上のつる草を抜けるか、その下をくぐった場合、フェンスまたはスコアボードの隙間を抜けた場合、あるいはフェンス、スコアボード、灌木およびフェンスのつる草に挟まって止まった場合には、打者、走者ともに2個の進塁権が与えられる。

(8) バウンドしたフェアボールが、野手に触れて進路が変わり、フェア地域またはファウル地域のスタンドに入った場合か、フェンスを越えるか、くぐるかした場合、打者、走者、ともに2個の進塁権が与えられる。

(9) フェア飛球が野手に触れて進路が変わり、

(A) ファウル地域のスタンドに入るか、またはファウル地域のフェンスを越えた場合──打者に二塁が与えられる。

(B) フェア地域のスタンドに入るか、またはフェア地域のフェンスを越えた場合──打者に本塁が与えられる。
ただし(B)の場合、そのスタンドまたはフェンスが、本塁から250㌳(76.199㍍)未満の距離にあるときは、打者に二塁が与えられるだけである。

【注】 (a)項各規定で、打者、走者ともに2個の進塁権が与えられる場合は、投手の投球当時に占有していた塁を基準とする。

(b) 打者は、次の場合走者となり、アウトにされるおそれなく、安全に一塁が与えられる。(ただし、打者が一塁に進んで、これに触れることを条件とする)

(1) 審判員が〝四球〟を宣告した場合。

【原注】 監督からのシグナルを得て審判員より一塁を与えられた打者を含む、ボール4個を得て一塁への安全進塁権を得た打者は、一塁へ進んでかつこれに触れなければならない義務を負う。これによって、塁上の走者は次塁への進塁を余儀なくされる。この考え方は、満塁のときおよび代走者を出場させるときにも適用される。
打者への〝四球〟の宣告により、進塁を余儀なくされた走者が何らかのプレイがあると思い込んで塁に触れずにまたは触れてからでも、その塁を滑り越してしまえば、野手に触球されるとアウトになる。また、与えられた塁に触れそこなってその塁よりも余分に進もうとした場合には、身体またはその塁に触球されればアウトになる。

(2) 打者が打とうとしなかった投球に触れた場合。

ただし、(1) バウンドしない投球が、ストライクゾーンで打者に触れたとき、(2) 打者が投球を避けないでこれに触れたときは除かれる。
バウンドしない投球がストライクゾーンで打者に触れた場合には、打者がこれを避けようとしたかどうかを問わず、すべてストライクが宣告される。
しかし、投球がストライクゾーンの外で打者に触れ、しかも、打者がこれを避けようとしなかった場合には、ボールが宣告される。

【規則説明】 打者が投球に触れたが一塁を許されなかった場合も、ボールデッドとなり、各走者は進塁できない。

【原注】 投球が打者の身に着けているネックレス、ブレスレットなどの装身具にだけ触れた場合には、その打者が投球に触れたものとはみなさない。

【注1】 〝投球がストライクゾーンで打者に触れた〟ということは、ホームプレートの上方空間に限らず、これを前後に延長した空間で打者に触れた場合も含む。

【注2】 投球が、ストライクゾーンの外で打者に触れた場合でも、その投球が、ストライクゾーンを通っていたときには、打者がこれを避けたかどうかを問わず、ストライクが宣告される。

【注3】 打者が投球を避けようとしたかどうかは、一に球審の判断によって決定されるものであって、投球の性質上避けることができなかったと球審が判断した場合には、避けようとした場合と同様に扱われる。

【注4】 投球がいったん地面に触れた後、これを避けようと試みた打者に触れた場合も、打者には一塁が許される。ただし、ストライクゾーンを通ってからバウンドした投球に触れた場合を除く。

(3) 捕手またはその他の野手が、打者を妨害(インターフェア)した場合。しかし、妨害にもかかわらずプレイが続けられたときには、攻撃側チームの監督は、そのプレイが終わってからただちに、妨害行為に対するペナルティの代わりに、そのプレイを生かす旨を通告することができる。
ただし、妨害にもかかわらず、打者が安打、失策、四球、死球、その他で一塁に達し、しかも他の全走者が少なくとも1個の塁を進んだときは、妨害とは関係なく、プレイは続けられる。

【原注】 捕手の妨害が宣告されてもプレイが続けられたときは、そのプレイが終わってからこれを生かしたいと監督が申し出るかもしれないから、球審はそのプレイを継続させる。
打者走者が一塁を空過したり、走者が次塁を空過しても、〔5.06b3付記〕に規定されているように、塁に到達したものとみなされる。
監督がプレイを選ぶ場合の例。
① 1アウト走者三塁、打者が捕手に妨げられながらも外野に飛球を打ち、捕球後三塁走者が得点した。監督は、打者アウトで得点を記録するのと、走者三塁、一塁(打者が打撃妨害により出塁)とのいずれを選んでもよい。
② 0アウト走者二塁、打者は捕手に妨げられながらもバントして走者を三塁に進め、自らは一塁でアウトになった。監督は、0アウト走者二塁、一塁とするよりも、走者三塁で1アウトとなる方を選んでもよい。
三塁走者が盗塁またはスクイズプレイにより得点しようとした場合のペナルティは、6.01(G)に規定されている。
投手が投球する前に、捕手が打者を妨害した場合、打者に対する妨害とは考えられるべきではない。このような場合には、審判員は〝タイム〟を宣告して〝出発点〟からやり直させる。

【注1】 監督がプレイを生かす旨を球審に通告するにあたっては、プレイが終わったら、ただちに行なわれなければならない。なお、いったん通告したら、これを取り消すことはできない。

【注2】 監督がペナルティの適用を望んだ場合、次のとおり解釈できる。
捕手(または他の野手)が打者を妨害した場合、打者には一塁が与えられる。三塁走者が盗塁またはスクイズプレイによって得点しようとしたときに、この妨害があった場合にはボールデッドとし、三塁走者の得点を認め、打者には一塁が与えられる。
三塁走者が盗塁またはスクイズプレイで得点しようとしていなかったときに、捕手が妨害した場合にはボールデッドとし、打者に一塁が与えられ、そのために塁を明け渡すことになった走者は進塁する。盗塁を企てていなかった走者と塁を明け渡さなくてもよい走者とは、妨害発生の瞬間に占有していた塁にとめおかれる。

(4) 野手(投手を含む)に触れていないフェアボールが、フェア地域で審判員または走者に触れた場合。
ただし、内野手(投手を除く)をいったん通過するか、または野手(投手を含む)に触れたフェアボールが審判員に触れた場合にはボールインプレイである。

5.06 走   者

(a) 塁の占有

(1) 走者がアウトになる前に他の走者の触れていない塁に触れれば、その塁を占有する権利を獲得する。
その走者は、アウトになるか、または、その塁に対する正規の占有権を持っている他の走者のためにその塁を明け渡す義務が生じるまで、その権利が与えられる。

【5.06a・c原注】 走者が塁を正規に占有する権利を得て、しかも投手が投球姿勢に入った場合は、元の占有塁に戻ることは許されない。

(2) 2人の走者が同時に一つの塁を占有することは許されない。ボールインプレイの際、2人の走者が同一の塁に触れているときは、その塁を占有する権利は前位の走者に与えられているから、後位の走者はその塁に触れていても触球されればアウトとなる。ただし本条(b)(2)項適用の場合を除く。

(b) 進塁

(1) 走者は進塁するにあたり、一塁、二塁、三塁、本塁の順序に従って、各塁に触れなければならない。逆走しなければならないときも、5.06(c)の各項規定のボールデッドとなっていない限り、すべての塁を逆の順序で、再度触れて行かなければならない。前記のボールデッドの際は、途中の塁を踏まないで、直接元の塁へ帰ることはさしつかえない。

【注1】 ボールインプレイ中に起きた行為(たとえば悪送球、ホームランまたは柵外に出たフェアヒットなど)の結果、安全進塁権が認められたときでも、走者が、進塁または逆走するにあたっては、各塁に正規に触れなければならない。

【注2】 〝逆走しなければならないとき〟というのは、
① フライが飛んでいるうちに次塁に進んだ走者が、捕球されたのを見て帰塁しようとする場合(5.09b5参照)
② 塁を空過した走者が、その塁を踏み直す場合(5.09c2参照)
③ 自分よりも前位の走者に先んじるおそれがある場合(5.09b9参照)
を指すものであって、このようなときでも、逆の順序で各塁に触れなければならない

(2) 打者が走者となったために進塁の義務が生じ、2人の走者が後位の走者が進むべき塁に触れている場合には、その塁を占有する権利は後位の走者に与えられているので、前位の走者は触球されるか、野手がボールを保持してその走者が進むべき塁に触れればアウトになる。(5.09b6参照)

(3) 次の場合、打者を除く各走者は、アウトにされるおそれなく1個の塁が与えられる。

(A) ボークが宣告された場合。

(B) 打者が次の理由で走者となって一塁に進むために、その走者が塁を明け渡さなければならなくなった場合。
① 打者がアウトにされるおそれなく、一塁に進むことが許された場合。
② 打者の打ったフェアボールが、野手(投手を含む)に触れる前か、または野手(投手を除く)を通過する前に、フェア地域で審判員もしくは他の走者に触れた場合。

【原注】 安全進塁権を得た走者が、与えられた塁に触れた後さらに進塁することはさしつかえないが、その行為の責任はその走者自身が負うだけで、たとえ与えられた塁に触れた後にアウトになった場合でも、他の走者の安全進塁権に影響を及ぼすことはない。
したがって、2アウト後その走者が与えられた塁に触れた後にアウトになり、第3アウトが成立しても安全進塁権がある前位の走者は、そのアウトの後で本塁を踏んでも得点として認められる。
例──2アウト満塁、打者四球、二塁走者が勢いこんで、三塁を回って本塁の方へ向かってきたが、捕手からの送球で触球アウトとなった。たとえ2アウト後であっても、四球と同時に三塁走者が本塁に押し出されたので、すべての走者に次塁へ進んで触れる必要が生まれたという理論に基づいて得点が記録される。

【注】 本項〔原注〕は、打者が四球を得たために、塁上の各走者に次塁への安全進塁権が与えられた場合だけに適用される。

(C) 野手が飛球を捕らえた後、《ボールデッドの個所に踏み込んだり、倒れ込んだ場合。》

【原注】 野手が正規の捕球をした後、《ボールデッドの個所に踏み込んだり、倒れ込んだ場合、》ボールデッドとなり、各走者は野手が《ボールデッドの個所に入ったとき》の占有塁から1個の進塁が許される。

D) 走者が盗塁を企てたとき、打者が捕手またはその他の野手に妨害(インターフェア)された場合。

【注】 本項は、盗塁を企てた塁に走者がいない場合とか、進もうとした塁に走者がいても、その走者もともに盗塁を企てていたために次塁への進塁が許される場合だけに適用される。しかし、進もうとした塁に走者があり、しかもその走者が盗塁を企てていない場合には、たとえ盗塁行為があってもその走者の進塁は許されない。また単に塁を離れていた程度では本項は適用されない。

(E) 野手が帽子、マスク、その他着衣の一部を本来つけている個所から離して、投球に故意に触れさせた場合。
この際はボールインプレイで、ボールに触れたときの走者の位置を基準に塁が与えられる。

【5.06b3付記】 ボールインプレイのもとで1個の塁に対する安全進塁権を得た走者が、その塁を踏まないで次塁に進もうとした場合、および2個以上の塁に対する安全進塁権を得た走者が、与えられた最終塁に達した後はボールインプレイになる規則のもとで、その塁を踏まないで次塁へ進もうとした場合は、いずれもその走者は安全進塁権を失ってアウトにされるおそれがある状態におかれる。したがって、その進むことが許された塁を踏み損ねた走者は、その空過した塁に帰る前に、野手によってその身体またはその塁に触球されれば、アウトとなる。

【注】 たとえば、打者が右中間を抜こうとするような安打を打ったとき、右翼手が止めようとしてこれにグラブを投げつけて当てたが、ボールは外野のフェンスまで転じ去った。打者は三塁を空過して本塁へ進もうとしたが、途中で気がついて三塁へ踏み直しに帰ろうとした。この際、打者はもはや三塁へ安全に帰ることは許されないから、その打者が三塁に帰る前に、野手が打者または三塁に触球してアピールすれば、打者はアウトになる。(5.06b4C参照)

(4) 次の場合、各走者(打者走者を含む)は、アウトにされるおそれなく進塁することができる。

(A) 本塁が与えられる得点が記録される場合──フェアボールがインフライトの状態でプレイングフィールドの外へ出て、しかも、各走者が正規に各塁を触れた場合。また、フェアボールがインフライトの状態で、明らかにプレイングフィールドの外へ出ただろうと審判員が判断したとき、野手がグラブ、帽子、その他着衣の一部を投げつけて、その進路を変えた場合。

【注1】 フェアの打球がインフライトの状態で、明らかにプレイングフィールドの外へ出ただろうと審判員が判断したとき、観衆や鳥などに触れた場合には、本塁が与えられる。
送球またはインフライトの打球が、鳥に触れた場合は、ボールインプレイでありインフライトの状態は続く。しかし、プレイングフィールド上(地上)の鳥または動物に触れた場合は、ボールインプレイであるが、インフライトの状態でなくなる。また、投球が鳥に触れた場合は、ボールデッドとしてカウントしない。犬などがフェアの打球、送球または投球をくわえたりした場合には、ボールデッドとして審判員の判断によって処置する。

【注2】 〝その進路を変えた場合〟とあるが、インフライトの状態で、明らかにプレイングフィールドの外へ出ただろうと審判員が判断したフェアの打球が、野手の投げつけたグラブなどに触れて、グラウンド内に落ちたときでも、本項が適用される。

(B) 3個の塁が与えられる場合──野手が、帽子、マスクその他着衣の一部を、本来つけている個所から離して、フェアボールに故意に触れさせた場合。
この際はボールインプレイであるから、打者はアウトを賭して本塁に進んでもよい。

(C) 3個の塁が与えられる場合──野手が、グラブを故意に投げて、フェアボールに触れさせた場合。
この際はボールインプレイであるから、打者はアウトを賭して本塁に進んでもよい。

【注】 ここにいうフェアボールとは、野手がすでに触れていたかどうかを問わない。

(D) 2個の塁が与えられる場合──野手が、帽子、マスクその他着衣の一部を、本来つけている個所から離して、送球に故意に触れさせた場合。
この際はボールインプレイである。

(E) 2個の塁が与えられる場合──野手が、グラブを故意に投げて、送球に触れさせた場合。
この際はボールインプレイである。

【BCDE原注】 投げたグラブ、本来の位置から離した帽子、マスクその他がボールに触れなければ、このペナルティは適用されない。

【CE原注】 このペナルティは、打球または送球の勢いにおされて、野手の手からグラブが脱げたとき、あるいは正しく捕らえようと明らかに努力したにもかかわらず、野手の手からグラブが脱げた場合などには、適用されない。

【BCDE注】 野手より、本項の行為がなされた場合の走者の進塁の起点は、野手が投げたグラブ、本来の位置から離した帽子、マスクその他が打球または送球に触れた瞬間とする。

(F) 2個の塁が与えられる場合──フェアの打球が、
① バウンドしてスタンドに入るか、または野手に触れて進路が変わって、一塁または三塁のファウル線外にあるスタンドに入った場合。
② 競技場のフェンス、スコアボード、灌木、またはフェンスのつる草を抜けるか、その下をくぐるか、挟まって止まった場合。

(G) 2個の塁が与えられる場合──送球が、
① 競技場内に観衆があふれ出ていないときに、スタンドまたはベンチに入った場合。(ベンチの場合は、リバウンドして競技場に戻ったかどうかを問わない。)
② 競技場のフェンスを超えるか、くぐるか、抜けた場合。
③ バックストップの上部のつぎ目から、上方に斜めに張ってある金網に上がった場合。
④ 観衆を保護している金網の目に挟まって止まった場合。
この際は、ボールデッドとなる。
審判員は2個の進塁を許すにあたって、次の定めに従う。すなわち、打球処理直後の内野手の最初のプレイに基づく悪送球であった場合には、投手の投球当時の各走者の位置、その他の場合は、悪送球が野手の手を離れたときの各走者の位置を基準として定める。

【規則説明】 悪送球が打球処理直後の内野手の最初のプレイに基づくものであっても、打者を含む各走者が少なくとも1個の塁を進んでいた場合には、その悪送球が内野手の手を離れたときの各走者の位置を基準として定める。

【原注】 ときによっては、走者に2個の塁が与えられないこともある。
たとえば、走者一塁のとき、打者が浅い右翼飛球を打った。走者は一塁二塁間で立ち止まっており、打者は一塁を過ぎて走者の後ろまできた。打球は捕らえられず、外野手は一塁に送球したが送球はスタンドに入った。すべてボールデッドとなったときは、走者は進む権利を与えられた塁以上には進塁できないから、一塁走者は三塁へ、打者走者は二塁まで進む。

規則説明 〝悪送球がなされたとき〟という術語が、その送球が実際に野手の手を離れたときのことであって、地面にバウンドした送球がこれを捕ろうとした野手を通過したときとか、スタンドの中へ飛び込んでプレイからはずれたときのことではない。
内野手による最初の送球がスタンドまたはダッグアウトに入ったが、打者が走者となっていない(三塁走者が捕逸または暴投を利して得点しようとしたときに、アウトにしようとした捕手の送球がスタンドに入った場合など)ような場合は、その悪送球がなされたときの走者の位置を基準として2個の進塁が許される。(5.06b4Gの適用に際しては、捕手は内野手とみなされる)
例──走者一塁、打者が遊ゴロを打った。遊撃手は、二塁でフォースアウトしようとして送球したが間に合わなかった。二塁手は打者が一塁を通り過ぎてから一塁手に悪送球した。
──二塁に達してした走者は得点となる。(このようなプレイで、送球がなされたとき、打者走者が一塁に達していなかったときは、打者走者は二塁が許される)

(H) 1個の塁が与えられる場合──打者に対する投手の投球、または投手板上から走者をアウトにしようと試みた送球が、スタンドまたはベンチに入った場合、競技場のフェンスまたはバックストップを超えるか、抜けた場合。
この際はボールデッドとなる。

【規則説明】 投手の投球が捕手を通過した後(捕手が触れたかどうかを問わない)、ダッグアウト、スタンドなどボールデッドの個所に入った場合、および投手板に触れている投手が走者をアウトにしようと試みた送球が直接前記の個所に入った場合、1個の塁が与えられる。
しかしながら、投球または送球が、捕手または他の野手を通過した後、プレイングフィールド内にあるボールを捕手または野手が蹴ったり、捕手または野手にさらに触れたりして、前記の個所に入った場合は、投球当時または送球当時の走者の位置を基準として2個の塁が与えられる。

(I) 四球目、三振目の投球が、捕手のマスクまたは用具、あるいは球審の身体やマスクまたは用具に挟まって止まった場合、1個の塁が与えられる。
ただし、打者の四球目、三振目の投球が(h)および(i)項規定の状態になっても、打者には一塁が与えられるにすぎない。

【原注1】 走者がアウトにされることなく1個またはそれ以上の塁が与えられたときでも、与えられた塁またはその塁に至るまでの途中の塁に触れる義務を負うものである。
例──打者が内野にゴロを打ち、内野手の悪送球がスタンドに飛び込んだ。打者走者は一塁を踏まないで二塁に進んだ。打者走者は二塁を許されたわけだが、ボールインプレイになった後、一塁でアピールされればアウトになる。

【原注2】 飛球が捕らえられたので元の塁に帰らなければならない走者は、グラウンドルールやその他の規則によって、余分の塁が与えられたときでも投手の投球当時の占有塁のリタッチを果たさなければならない。この際、ボールデッド中にリタッチを果たしてもよい。また、与えられる塁はリタッチを果たさなければならない塁が基準となる。

【注】 打者の四球目または三振目の投手の投球が、(H)項〔規則説明〕後段の状態になったときは、打者にも二塁が与えられる。

(c) ボールデッド

次の場合にはボールデッドとなり、走者は1個の進塁が許されるか、または帰塁する。その間に走者はアウトにされることはない。

(1) 投球が、正規に位置している打者の身体、または着衣に触れた場合──次塁に進むことが許された走者は進む。

(2) 球審が、盗塁を阻止しようとしたり、塁上の走者をアウトにしようとする捕手の送球動作を妨害(インターフェア)した場合──各走者は戻る。

【付記】 捕手の送球が走者をアウトにした場合には、妨害はなかったものとする。

【原注】 捕手の送球動作に対する球審の妨害には、投手への返球も含む。

【注】 捕手の送球によってランダウンプレイが始まろうとしたら、審判員はただちに〝タイム〟を宣告して、走者を元の塁に戻す。

ボールデッドとなった際は、各プレーヤーはアウトになったり、進塁したり、帰塁したり、得点することはできない。
ただし、ボールインプレイ中に起きた行為(たとえば、ボーク、悪送球、インターフェア、ホームランまたはプレイングフィールドの外に出たフェアヒット)などの結果、1個またはそれ以上の進塁が認められた場合を除く。

(3) ボークの場合──各走者は進む。(6.02aペナルティ参照)

(4) 反則打球の場合──各走者は戻る。

(5) ファウルボールが捕球されなかった場合──各走者は戻る。
球審は塁上の走者が、元の塁にリタッチするまで、ボールインプレイの状態にしてはならない。

(6) 内野手(投手を含む)に触れていないフェアボールが、フェア地域で走者または審判員に触れた場合、あるいは内野手(投手を除く)を通過していないフェアボールが、審判員に触れた場合──打者が走者となったために、塁を明け渡す義務が生じた各走者は進む。
走者がフェアボールに触れても、次の場合には、審判員はアウトを宣告してはならない。なお、この際は、ボールインプレイである。
(A) いったん内野手に触れたフェアボールに触れた場合。
(B) 1人の内野手に触れないでその股間または側方を通過した打球にすぐその後方で触れても、このボールに対して他のいずれの内野手も守備する機会がなかったと審判員が判断した場合。

【原注】 打球が投手を通過してから、内野内に位置していた審判員に触れた場合は、ボールデッドとなる。フェア地域で野手によってそらされた打球が、まだインフライトの状態のまま、走者または審判員に触れ地上に落ちるまでに、内野手によって捕球されても、捕球とはならず、ボールインプレイの状態は続く。

【注】 フェアボールがファウル地域で審判員に触れた場合、ボールインプレイである。

(7) 投球が、捕手のマスクまたは用具、あるいは球審の身体やマスクまたは用具に挟まって止まった場合──各走者は進む。

【原注】 チップした打球が、球審に当たってはね返ったのを、野手が捕らえても、ボールデッドとなって、打者はアウトにはならない。チップした打球が、球審のマスクに挟まって止まっても、同様である。
第3ストライクと宣告された投球が、捕手を通過して球審に当たったときは、ボールインプレイである。球審に当たってはね返ったボールが、地上に落ちる前に捕球されても、打者はただちにアウトにはならない。ボールインプレイであり、打者は一塁に触れる前に、身体または一塁に触球されて、初めてアウトになる。
第3ストライクと宣告された投球または四球目の投球が、球審か捕手のマスクまたは用具に挟まって止まった場合、打者には一塁が与えられ、塁上の走者には1個の進塁が許される。

(8) 正規の投球が、得点しようとしている走者に触れた場合──各走者は進む。

5.07 投   手

(a) 正規の投球姿勢

投球姿勢にはワインドアップポジションと、セットポジションとの二つの正規のものがあり、どちらでも随時用いることができる。

投手は、投手板に触れて捕手からのサインを受けなければならない。

【原注】 投手がサインを見終わってから、投手板を外すことはさしつかえないが、外した後はすばやく投手板に踏み出して投球することは許されない。このような投球は、審判員によってクイックピッチと判断される。投手は、投手板を外したら、必ず両手を身体の両側に下ろさなければならない。
投手が、サインを見終わるたびに投手板を外すことは許されない。
投手は投球に際して、どちらの足も本塁の方向に2度目のステップを踏むことは許されない。塁に走者がいるときには、6.02(b)により反則投球となる。

(1) ワインドアップポジション

投手は、打者に面して立ち、その軸足は投手板に触れて置き、他の足の置き場には制限がない。

この姿勢から、投手は、
① 打者への投球動作を起こしたならば、中断したり、変更したりしないで、その投球を完了しなければならない。
② 実際に投球するときを除いて、どちらの足も地面から上げてはならない。ただし、実際に投球するときには、自由な足(軸足でない足)を1歩後方に引き、さらに1歩前方に踏み出すこともできる。

投手が軸足を投手板に触れて置き(他の足はフリー)、ボールを両手で身体の前方に保持すれば、ワインドアップポジションをとったものとみなされる。

【原注1】 ワインドアップポジションにおいては、投手は軸足でない足(自由な足)を投手板の上か、前方か、後方かまたは側方に置くことが許される。

【原注2】 (1)項の姿勢から、投手は、
① 打者に投球してもよい。
② 走者をアウトにしようとして塁に踏み出して送球してもよい。
③ 投手板を外してもよい(ボールを両手で保持した投手は、投手板から外したら必ず両手を身体の両側に下ろさなければならない)。投手板を外すときには、最初に軸足から外さなければならない。
また、前記の姿勢から、セットポジションに移ったり、ストレッチをすることは許されない。──違反すればボークとなる。

【注】 投手が投球に関連する動作をして、身体の前方で両手を合わせたら、打者に投球すること以外は許されない。したがって、走者をアウトにしようとして塁に踏み出して送球することも、投手板を外すこともできない。違反すればボークとなる。

(2) セットポジション

投手は、打者に面して立ち、軸足を投手板に触れ、他の足を投手板の前方に置き、ボールを両手で身体の前方に保持して、完全に動作を静止したとき、セットポジションをとったとみなされる。

この姿勢から、投手は、
① 打者に投球しても、塁に送球しても、軸足を投手板の後方(後方に限る)に外してもよい。
② 打者への投球に関連する動作を起こしたならば、中途で止めたり、変更したりしないで、その投球を完了しなければならない。

セットポジションをとるに際して〝ストレッチ〟として知られている準備動作(ストレッチとは、腕を頭上または身体の前方に伸ばす行為をいう)を行なうことができる。しかし、ひとたびストレッチを行なったならば、打者に投球する前に、必ずセットポジションをとらなければならない。

投手は、セットポジションをとるに先立って、片方の手を下に下ろして身体の横につけていなければならない。この姿勢から、中断することなく、一連の動作でセットポジションをとらなければならない。

投手は、ストレッチに続いて投球する前には(a)ボールを両手で身体の前方に保持し、(b)完全に静止しなければならない。審判員は、これを厳重に監視しなければならない。投手は、しばしば走者を塁に釘づけにしようと規則破りを企てる。投手が〝完全な静止〟を怠った場合には、審判員は、ただちにボークを宣告しなければならない。

【原注】 走者が塁にいない場合、セットポジションをとった投手は、必ずしも完全静止をする必要はない。
しかしながら、投手が打者のすきをついて意図的に投球したと審判員が判断すれば、クイックピッチとみなされ、ボールが宣告される。6.02(a)(5)〔原注〕参照。
塁に走者がいるときに、投手が投手板に軸足を並行に触れ、なおかつ自由な足を投手板の前方に置いた場合には、この投手はセットポジションで投球するものとみなされる。

【注1】 (1)(2)項でいう〝中断〟とは、投手が投球動作を起こしてから途中でやめてしまったり、投球動作中に一時停止したりすることであり、〝変更〟とは、ワインドアップポジションからセットポジション(または、その逆)に移行したり、投球動作から塁への送球(けん制)動作に変更することである。

【注2】 投手がセットポジションをとるにあたっては、投手板を踏んだ後投球するまでに、必ずボールを両手で保持したことを明らかにしなければならない。その保持に際しては、身体の前面ならどこで保持してもよいが、いったん両手でボールを保持して止めたならば、その保持した個所を移動させてはならず、完全に身体の動作を停止して、首以外はどこも動かしてはならない。

【注3】 セットポジションからの投球に際して、自由な足は、
① 投手板の真横に踏み出さない限り、前方ならどの方向に踏み出しても自由である。
② ワインドアップポジションの場合のように、1歩後方に引き、そして更に1歩踏み出すことは許されない。

【注4】 投手は走者が塁にいるとき、セットポジションをとってからでも、プレイの目的のためなら、自由に投手板を外すことができる。この場合、軸足は必ず投手板の後方に外さなければならず、側方または前方に外すことは許されない。投手が投手板を外せば、打者への投球はできないが、走者のいる塁には、ステップをせずに、スナップだけで送球することも、また送球のまねをすることも許される。

【注5】 ワインドアップポジションとセットポジションとの区別なく、軸足を投手板に触れてボールを両手で保持した投手が、投手板から軸足を外すにあたっては、必ずボールを両手で保持したまま外さなければならない。また、軸足を投手板から外した後には、必ず両手を離して身体の両側に下ろし、あらためて軸足を投手板に触れなければならない。

【問】 投手がストレッチを行なってから、セットポジションをとるまでに、両手を顔の前で接触させ、そのまま下ろし、胸の前でボールを保持した。ボークになるか。

【答】 たとえ顔の前で両手を接触させても、そのままの連続したモーションで、胸の前に下ろして静止すれば、ボークにはならない。しかし、いったん顔の前で停止すれば、そこでボールを保持したことになるから、その姿勢から両手を下に下ろせばボークとなる。

(b) 準備投球

投手は各回のはじめに登板する際、あるいは他の投手を救援する際には、捕手を相手に8球を超えない準備投球をすることは許される。この間プレイは停止される。

各リーグは、その独自の判断で、準備投球の数を8球以下に制限してもさしつかえない。このような準備投球は、いずれの場合も1分間を超えてはならない。

突然の事故のために、ウォームアップをする機会を得ないで登板した投手には、球審は必要と思われる数の投球を許してもよい。

(c) 投手の遅延行為

塁に走者がいないとき、投手はボールを受けた後12秒以内に打者に投球しなければならない。投手がこの規則に違反して試合を長引かせた場合には、球審はボールを宣告する。

12秒の計測は、投手がボールを所持し、打者がバッタースボックスに入り、投手に面したときから始まり、ボールが投手の手から離れたときに終わる。

この規則は、無用な試合引き延ばし行為をやめさせ、試合をスピードアップするために定められたものである。したがって、審判員は次のことを強調し、それにもかかわらず、投手の明らかな引き延ばし行為があったときには、遅滞なく球審はボールを宣告する。

(1) 投球を受けた捕手は、速やかに投手に返球すること。

(2) また、これを受けた投手は、ただちに投手板を踏んで、投球位置につくこと。

(d) 塁に送球

投手が、準備動作を起こしてからでも、打者への投球動作を起こすまでなら、いつでも塁に送球することができるが、それに先立って、送球しようとする塁の方向へ、直接踏み出すことが必要である。

【原注】 投手は送球の前には、必ず足を踏み出さなければならない。スナップスロー(手首だけで送球すること)の後で、塁に向かって踏み出すようなことをすればボークとなる。

【注】 投手が投手板を外さずに一塁へ送球する場合、投手板上で軸足が踏みかわっても、その動作が一挙動であればさしつかえない。しかし、送球前に軸足を投手板の上でいったん踏みかえた後で送球すれば、軸足の投手板上の移行としてボークとなる。

(e) 軸足を外したとき

投手がその軸足を投手板の後方に外したときは、内野手とみなされる。したがって、その後、塁に送球したボールが悪送球となった場合には、他の内野手による悪送球と同様に取り扱われる。

【原注】 投手は、投手板を離れているときならば、意のままに走者のいる塁ならどの塁に送球してもよいが、もしその送球が悪送球となれば、その送球は内野手の送球とみなされ、その後の処置は、野手の送球に関する規則が適用される。(5.06b4G)

(f) 両手投げ投手

投手は、球審、打者および走者に、投手板に触れる際に、どちらかの手にグラブをはめることで、投球する手を明らかにしなければならない。

投手は、打者がアウトになるか走者になるか、攻守交代になるか、打者に代打者が出るか、あるいは投手が負傷するまでは、投球する手を変えることはできない。投手が負傷したために、同一打者の打撃中に投球する手を変えれば、その投手は以降再び投球する手を変えることはできない。投手が投球する手を変えたときには、準備投球は認められない。

投球する手の変更は、球審にはっきりと示さなければならない。

5.08 得点の記録

(a) 3人アウトになってそのイニングが終了する前に、走者が正規に一塁、二塁、三塁、本塁に進み、かつこれに触れた場合には、その都度、1点が記録される。

【例外】 第3アウトが次のような場合には、そのアウトにいたるプレイ中に、走者(1、2にあたる場合は全走者、3にあたる場合は後位の走者)が本塁に進んでも、得点は記録されない。
(1) 打者走者が一塁に触れる前にアウトにされたとき。(5.09a、6.03a参照)
(2) 走者がフォースアウトされたとき。(5.09b6参照)
(3) 前位の走者が塁に触れ損ねてアウトにされたとき。(5.09c1・2、同d参照)

【原注】 たとえば、三塁走者が、飛球が捕らえられてから、離塁して本塁を踏んだ後、離塁が早かったと誤信して、三塁に帰ろうとした場合のように、走者が正規の走塁を行なって本塁に触れたならば、その走者のそれ以後の行為によって、その得点は無効とはならない。

【注1】 第3アウトがフォースアウト以外のアウトで、そのプレイ中に他の走者が本塁に達した場合、審判員は、その走者にアピールプレイが残っているか否かに関係なく、本塁到達の方が第3アウトより早かったか否かを明示しなければならない。

【注2】 本項は打者および塁上の走者に安全進塁権が与えられたときも適用される。たとえば、2アウト後ある走者が他の走者に先んじたためにアウトになったときは、そのアウトになった走者よりも後位の打者または走者の得点が認められないことはもちろんであるが、たとえアウトになった走者より前位の走者でも第3アウトが成立するまでに本塁を踏まなければ得点は認められない。
ただし、2アウト満塁で、打者が四球を得たとき、他のいずれかの走者がいったん次塁を踏んだ後にアウトになったときだけ、その第3アウトが成立した後に三塁走者が本塁を踏んでも、得点と認められる。(5.06b3b〔原注〕参照)

(b) 正式試合の最終回の裏、または延長回の裏、満塁で、打者が四球、死球、その他のプレイで一塁を与えられたために走者となったので、打者とすべての走者が次の塁に進まねばならなくなり三塁走者が得点すれば勝利を決する1点となる場合には、球審は三塁走者が本塁に触れるとともに、打者が一塁に触れるまで、試合の終了を宣告してはならない。

【原注】 例外として観衆が競技場になだれこんで、走者が本塁に触れようとするのを、または打者が一塁に触れようとするのを肉体的に妨げた場合には、審判員は観衆のオブストラクションとして走者の得点または進塁を認める。

ペナルティ 前記の場合、三塁走者が、適宜な時間がたっても、あえて本塁に進もうとせず、かつこれに触れようとしなかった場合には、球審は、その得点を認めず、規則に違反したプレーヤーにアウトを宣告して、試合の続行を命じなければならない。
また、2アウト後、打者走者があえて一塁に進もうとせず、かつこれに触れようとしなかった場合には、その得点を認めず、規則に違反したプレーヤーにアウトを宣告して、試合続行を命じなければならない。
0アウトまたは1アウトのとき、打者走者があえて一塁に進もうとせず、かつこれに触れようとしなかった場合には、その得点は記録されるが、打者走者はアウトを宣告される。

【注】 たとえば、最終回の裏、満塁で、打者が四球を得たので決勝点が記録されるような場合、次塁に進んで触れる義務を負うのは、三塁走者と打者走者だけである。三塁走者または打者走者が適宜な時間がたっても、その義務を果たそうとしなかった場合に限って、審判員は、守備側のアピールを待つことなくアウトの宣告を下す。
打者走者または三塁走者が進塁に際して塁に触れ損ねた場合も、適宜な時間がたっても触れようとしなかった場合に限って、審判員は、守備側のアピールを待つことなく、アウトの宣告を下す。

【5.08原注】 規則説明 打者走者のアウトが一塁に触れる前のアウトの形をとり、それが第3アウトにあたったときは、たとえ他の走者がアウトの成立前か、あるいはそのアウトが成立するまでのプレイ中に本塁に触れていても得点は記録されない。
〔例〕 1アウト走者一・二塁のとき打者が安打したので、二塁走者は本塁に達したが、一塁走者は本塁への送球でアウトにされて2アウトとなった。この間、打者走者は二進していたが、途中一塁を踏んでいなかったので一塁でアピールされて打者はアウトになり、3アウトとなった。──二塁走者は〝打者走者が一塁に触れる前のアウトで、しかも第3アウトにあたる場合〟のプレイ中に本塁に触れたのであるから、その得点は記録されない。
規則説明 2アウト以前であれば、前位の走者の行為によって後位の走者が影響を受けることはない。
〔例〕 1アウト走者一・二塁のとき、打者は場内本塁打を打った。二塁走者は本塁へ達する間に三塁を空過した。一塁走者と打者は正しく塁を踏んで本塁に達した。守備側は三塁に送球してアピールしたので、審判員は二塁走者に対してアウトを宣告して、2アウトとなった。── 一塁走者と打者の得点は認められる。
規則説明 2アウト走者一・二塁のとき、打者が場内本塁打を打ち、3人とも本塁を踏んだが、二塁走者は三塁を空過したので、アピールによってアウトにされ、3アウトとなった。──一塁走者と打者は正しく本塁を踏んではいるが、得点は数えられない。
規則説明 1アウト走者二・三塁のとき、打者が中堅飛球を打ってアウトになり、2アウトとなった。三塁走者はそのフライアウトを利して本塁に触れ、二塁走者も本塁への悪送球によって得点した。このとき三塁走者に対してアピールがあり、捕球前に三塁を離れたものと判定されて、3アウトとなった。──無得点である。
規則説明 2アウト満塁のとき、打者はフェンス越えの本塁打を打って4人とも本塁を踏んだが、打者は一塁を踏まなかったのでアピールされて3アウトになった。──この場合、打者のアウトは一塁に触れる前の第3アウトの形をとるから、無得点である。

一般的にアピールと得点の関係は以下のとおりとなる。
塁を踏み損ねた走者または飛球がとらえられたときにリタッチを果たさなかった走者に対して、守備側がアピールした場合、審判員がそれを認めたときにその走者はアウトになる。
2アウトのとき、後位の走者がアピールによって第3アウトとなった場合、前位の走者はそのアウトよりも先に正しい走塁を行なって本塁に触れていれば得点となる。
また、フォースの状態での塁の空過や打者走者の一塁空過がアピールによって第3アウトになった場合、すべての走者は正しい走塁を行なっていても得点とはならない。
規則説明 1アウト走者一・三塁のとき、打者の右翼飛球で2アウトとなった。三塁走者は捕球後三塁にリタッチして本塁を踏んだが、一塁走者は二塁へ向かっていたので一塁に帰塁しようと試みたが、右翼手の送球でアウトになった。三塁走者はそのアウトより早く本塁を踏んでいた。── 一塁走者のアウトはフォースアウトでないから、その第3アウトより早く本塁を踏んだ三塁走者の得点は記録される。

5.09 ア ウ ト

(a) 打者アウト

打者は、次の場合、アウトとなる。

(1) フェア飛球またはファウル飛球(ファウルチップを除く)が、野手に正規に捕らえられた場合。

【原注1】 野手は捕球するためにダッグアウトの中に手を差し伸べることはできるが、足を踏み込むことはできない。野手がボールを確捕すれば、それは正規の捕球となる。ダッグアウトまたはボールデッドの個所(たとえばスタンド)に近づいてファウル飛球を捕らえるためには、野手はグラウンド(ダッグアウトの縁を含む)上または上方に片足または両足を置いておかなければならず、またいずれの足もダッグアウトの中またはボールデッドの個所の中に置いてはならない。正規の捕球の後、野手がダッグアウトまたはボールデッドの個所に踏み込んだり、倒れ込んだ場合、ボールデッドとなる。走者については5.06(b)(3)(c)〔原注〕参照。

捕球とは、野手が、インフライトの打球、投球または送球を、手またはグラブでしっかりと受け止め、かつそれを確実につかむ行為であって、帽子、プロテクター、あるいはユニフォームのポケットまたは他の部分で受け止めた場合は、捕球とはならない。

また、ボールに触れると同時に、あるいはその直後に、他のプレーヤーや壁と衝突したり、倒れた結果、落球した場合は〝捕球〟ではない。

野手が飛球に触れ、そのボールが攻撃側チームのメンバーまたは審判員に当たった後に、いずれの野手がこれを捕らえても〝捕球〟とはならない。

野手がボールを受け止めた後、これに続く送球動作に移ってからボールを落とした場合は〝捕球〟と判断される。

要するに、野手がボールを手にした後、ボールを確実につかみ、かつ意識してボールを手放したことが明らかであれば、これを落とした場合でも〝捕球〟と判定される。

【原注2】 野手がボールを地面に触れる前に捕らえれば、正規の捕球となる。その間、ジャッグルしたり、あるいは他の野手に触れることがあってもさしつかえない。
走者は、最初の野手が飛球に触れた瞬間から、塁を離れてさしつかえない。
野手はフェンス、手すり、ロープなど、グラウンドと観客席との境界線を越えた上空へ、身体を伸ばして飛球を捕らえることは許される。また野手は、手すりの頂上やファウルグラウンドに置いてあるキャンバスの上に飛び乗って飛球を捕らえることも許される。しかし、野手が、フェンス、手すり、ロープなどを超えた上空やスタンドへ、身体を伸ばして飛球を捕らえようとすることは、危険を承知で行うプレイだから、たとえ観客にその捕球を妨げられても、観客の妨害行為に対してはなんら規則上の効力は発生しない。
ダッグアウトの縁で飛球を捕らえようとする野手が、中へ落ち込まないように、中にいるプレーヤー(いずれのチームかを問わない)によって身体を支えられながら捕球した場合、正規の捕球となる。

【注】 捕手が、身につけているマスク、プロテクターなどに触れてからはね返ったフライボールを地面に取り落とさずに捕らえれば、正規の〝捕球〟となる(ファウルチップについては定義34参照)。ただし、手またはミット以外のもの、たとえばプロテクターあるいはマスクを用いて捕らえたものは、正規の捕球とはならない。

(2) 第3ストライクと宣告された投球を、捕手が正規に捕球した場合。

【原注】 〝正規の捕球〟ということは、まだ地面に触れていないボールが、捕手のミットの中に入っているという意味である。ボールが、捕手の着衣または用具に止まった場合は、正規の捕球ではない。また、球審に触れてはね返ったボールを捕らえた場合も同様である。
チップしたボールが、最初に捕手の身体または用具に触れて、はね返ったのを捕手が地上に落ちる前に捕球した場合、ストライクであり、第3ストライクにあたるときには、打者はアウトである。

(3) 0アウトまたは1アウトで一塁に走者がいるとき、第3ストライクが宣告された場合。

【注】 0アウトまたは1アウトで一塁(一・二塁、一・三塁、一・二・三塁のときも同様)に走者がいた場合には、第3ストライクと宣告された投球を捕手が後逸したり、またはその投球が球審か捕手のマスクなどに入り込んだ場合でも、本項が適用されて打者はアウトになる。

(4) 2ストライク後の投球をバントしてファウルボールになった場合。

(5) インフィールドフライが宣告された場合。(2.40参照)

(6) 2ストライク後、打者が打った(バントの場合も含む)が、投球がバットに触れないで、打者の身体に触れた場合。

(7) 野手(投手を含む)に触れていないフェアボールが、打者走者に触れた場合。
ただし、打者がバッターボックス内にいて、打球の進路を妨害しようとする意図がなかったと審判員が判断すれば、打者に当たった打球はファウルボールとなる。

(8) 打者が打つか、バントしたフェアの打球に、フェア地域内でバットが再び当たった場合。
ボールデッドとなって、走者の進塁は認められない。
これに反して、フェアの打球が転がってきて、打者が落としたバットにフェア地域内で触れた場合は、ボールインプレイである。ただし、打者が打球の進路を妨害するためにバットを置いたのではないと審判員が判断したときに限られる。
打者がバッターボックス内にいて、打球の進路を妨害しようとする意図がなかったと審判員が判断すれば、打者の所持するバットに再び当たった打球はファウルボールとなる。

【原注】 バットの折れた部分がフェア地域に飛び、これに打球が当たったとき、またはバットの折れた部分が走者または野手に当たったときは、プレイはそのまま続けられ、妨害は宣告されない。打球がバットの折れた部分にファウル地域で当たったときは、ファウルボールである。
バット全体がフェア地域またはファウル地域に飛んで、プレイを企てている野手(打球を処理しようとしている野手だけでなく、送球を受けようとしている野手も含む)を妨害したときには、故意であったか否かの区別なく、妨害が宣告される。
打撃用ヘルメットに、偶然、打球がフェア地域で当たるか、または送球が当たったときは、ボールインプレイの状態が続く。
打球が、ファウル地域で打撃用ヘルメット、地面以外の異物に触れたときは、ファウルボールとなり、ボールデッドとなる。
走者がヘルメットを落としたり、ボールに投げつけて打球または送球を妨害しようとする意図があったと審判員が判断したときには、その走者はアウトとなり、ボールデッドとなって、他の走者は、打球に対してのときは投手の投球当時占有していた塁、送球に対してのときは妨害発生の瞬間に占有していた塁に帰らなければならない。

【注】 本項前段を適用するにあたっては、打者がバットを所持していたかどうかを問わない。

(9) 打者が、打つか、バントした後、一塁に走るにあたって、まだファウルと決まらないままファウル地域を動いている打球の進路を、どんな方法であろうとも故意に狂わせた場合。
ボールデッドとなって、走者の進塁は認められない。

(10) 打者が第3ストライクの宣告を受けた後、またはフェアボールを打った後、一塁に触れる前に、その身体または一塁に触球された場合。

【注】 触球するに際しては、まずボールを保持して触れることが必要なことはもちろん、触球後においても確実にボールを保持していなければならない。 
また、野手がボールを手にしていても、そのボールをグラブの中でジャッグルしたり、両腕と胸とでボールを抱き止めたりしている間は、確実に捕らえたとはいえないから、たとえ打者が一塁に触れる前に野手が塁に触れながらボールを手にしていても、確捕したのが打者が一塁に触れた後であればその打者はアウトにならない。

(11) 一塁に対する守備が行なわれているとき、本塁一塁間の後半を走るに際して、打者がスリーフットラインの外側(向かって右側)またはファウルラインの内側(向かって左側)を走って、一塁への送球を捕らえようとする野手の動作を妨げたと審判員が認めた場合。この際は、ボールデッドとなる。
ただし、打球を処理する野手を避けるために、スリーフットラインの外側(向かって右側)またはファウルラインの内側(向かって左側)を走ることはさしつかえない。

【原注】 スリーフットレーンを示すラインはそのレーンの一部であり、打者走者は両足をスリーフットレーンの中もしくはスリーフットレーンのライン上に置かなければならない。

(12) 0アウトまたは1アウトで、走者一塁、一・二塁、一・三塁または一・二・三塁のとき、内野手がフェアの飛球またはライナーを故意に落とした場合。
ボールデッドとなって、走者の進塁は認められない。

【規則説明】 内野手が打球に触れないでこれを地上に落としたときには、打者はアウトにならない。ただし、インフィールドフライの規則が適用された場合は、この限りではない。

【注1】 本項は、容易に捕球できるはずの飛球またはライナーを、内野手が地面に触れる前に片手または両手で現実にボールに触れて、故意に落とした場合に適用される。

【注2】 投手、捕手および外野手が、内野で守備した場合は、本項の内野手と同様に扱う。また、あらかじめ外野に位置していた内野手は除く。

(13) 野手が、あるプレイをなし遂げるために、送球を捕らえようとしているか、または送球しようとしているのを前位の走者が故意に妨害したと審判員が認めた場合。

【原注】 この規則は攻撃側プレーヤーによる許しがたい非スポーツマン的な行為に対するペナルティとして定められたものであって、走者が塁を得ようとしないで、併殺プレイのピボットマン(併殺の際、ボールを継送するプレーヤー。すなわち遊撃手─二塁手─一塁手とわたる併殺ならば二塁手、二塁手─遊撃手─一塁手の併殺ならば遊撃手がピボットマンである)を妨害する目的で、明らかにベースラインからはずれて走るような場合に適用されるものである。

【注】 まだアウトにならない前位の走者の妨害行為に対する処置は、本項では定めていないように見えるが、5.09(b)(3)に規定してあるとおり、このような妨害行為に対しては、その走者はもちろん打者もともにアウトにする規則であって、このような粗暴な行為を禁止するために規定された条項である。すでにアウトになった走者または得点したばかりの走者の妨害行為に対しては、6.01(a)(5)に規定されている。

(14) 2アウト、2ストライク後本盗を企てた三塁走者が、打者への正規の投球にストライクゾーンで触れた場合。
この際、打者は〝第3ストライク〟の宣告を受けてアウトとなり、その走者の得点は認められない。しかし0アウトまたは1アウトであれば、打者は〝第3ストライク〟の宣告を受けてアウトとなり、ボールデッドになるが、その得点は認められる。

【注】 0アウトまたは1アウトの場合には、他の塁の走者にも、次塁への走塁行為があったかどうかに関係なく、1個の進塁が許される。(5.06c8参照)

(15) 走者を除く攻撃側チームのメンバーが、打球を処理しようとしている野手の守備を妨害した場合。(6.01b参照。走者による妨害については5.09b3参照)

(b) 走者アウト

次の場合、走者はアウトとなる。

(1) 走者が、野手の触球を避けて、走者のベースパス(走路)から3㌳以上離れて走った場合。
ただし、走者が打球を処理している野手を妨げないための行為であれば、この限りではない。
この場合の走者のベースパス(走路)とは、タッグプレイが生じたときの、走者と塁を結ぶ直線をいう。

(2) 一塁に触れてすでに走者となったプレーヤーが、ベースパスから離れ、次の塁に進もうとする意志を明らかに放棄した場合。

【原注】 一塁に触れてすでに走者となったプレーヤーが、もはやプレイは続けられていないと思い込んで、ベースパスを離れてダッグアウトか守備位置の方へ向かったとき、審判員がその行為を走塁する意思を放棄したとみなすことができると判断した場合、その走者はアウトを宣告される。この際、たとえアウトが宣告されても、他の走者に関しては、ボールインプレイの状態が続けられる。この規則は、次のプレイなどに適用される。
例──0アウトまたは1アウトで、同点の最終回、走者一塁のとき、打者が競技場の外へサヨナラ本塁打を打った。一塁走者は、二塁を過ぎてから、本塁打で自動的に勝利が決まったと思い込み、ダイヤモンドを横切って自分のベンチに向かった。この間、打者は、本塁に向かって進んでいたような場合、走者は、〝次塁に進もうとする意志を放棄した〟という理由で、アウトを宣告され、打者走者は各塁を踏んで行って本塁打を生かすことが許される。もし、2アウト後ならば、本塁打は認められない。(5.09d参照)。
これはアピールプレイではない。
例──走者が一塁または三塁で触球されアウトを宣告されたと思い込んでダッグアウトに向かいだし、依然としてアウトだと思い込んでいる様子が明らかだと審判員が認めるのに適当な距離まで進んでいるときには、走者は進塁を放棄したという理由でアウトを宣告される。

【注】 フォースの状態におかれている走者に対しては、本項を適用しない。

(3) 走者が、送球を故意に妨げた場合、または打球を処理しようとしている野手の妨げになった場合。

ペナルティ 走者はアウトとなり、ボールデッドとなる。〔6.01a妨害に対するペナルティ〕参照。

【注1】 〝野手が打球を処理する〟とは、野手が打球に対して守備しはじめてから打球をつかんで送球し終わるまでの行為をいう。したがって、走者が、前期のどの守備行為でも妨害すれば、打球を処理しようとしている野手を妨げたことになる。

【注2】 走者が5.09(a)(11)、5.09(b)(1)項規定の走路を走っていた場合でも、打球を処理しようとしている野手の妨げになったと審判員が判断したときには、本項の適用を受けて、走者はアウトになる。

(4) ボールインプレイで走者が塁を離れているときに触球された場合。

【例外】 打者走者が一塁に走るときは、ただちに帰ることを条件としてならば、オーバーランまたはオーバースライドして一塁を離れているとき触球されても、アウトにはならない。

【規則説明A】 走者がいったん安全に塁に達した後、走者の衝撃で塁のバッグが定位置から離れたときは、その走者に対していかなるプレイもできない。

【規則説明B】 あるプレイ中に塁のバッグまたはホームプレートが定位置から離れたとき、引き続いて、次の走者が進塁してきて、元の塁が置かれていた地点に触れるか、またはその地点にとどまれば、その走者は正規に塁に触れたもの、または正規に塁を占有したものとみなされる。

【注1】 四球を得た打者が一塁に進むに際しては、ただちに帰ることを条件としてなら、一塁に触れた後、走り越すことは許される。

【注2】 野手が走者に触球しようとするときに、走者もアウトを免れようと、激しく触塁する場合が多く、野手と走者とが衝突した結果、野手がボールを落としたときは、触球後にボールを確実に保持していないことになるから、走者はアウトにはならない。また、野手が走者に触球した後でも、これを確実に握っていなければならず、たとえボールを地上に落とさなくても、手の上でジャッグルなどした場合には、走者はアウトにはならない。野手が触球した後、どのくらい確保すればよいかは、一に審判員の判定に待つべきである。(定義15参照)

(5) フェア飛球、ファウル飛球が正規に捕らえられた後、走者が帰塁するまでに、野手に身体またはその塁に触球された場合。

ただし、投手が打者へ次の1球を投じてしまうか、または、たとえ投球しなくてもその前にプレイをしたりプレイを企ててしまえば、帰塁をしていないという理由で走者がアウトにされることはない。この場合は、アピールプレイである。

【原注】 走者は、ファウルチップの際はタッグアップする必要はないから、盗塁することもできる。しかし、チップしたボールを捕手が捕らえられなかった場合は、ファウルボールとなるから、走者は元の塁へ戻らなければならない。

【注】 飛球が捕らえられたとき、走者が帰塁しなければならない塁とは、進塁の起点となる塁、すなわち、投手の投球当時走者が占有していた塁を指す。

(6) 打者が走者となったために、進塁の義務が生じた走者が次の塁に触れる前に、野手がその走者またはその塁に触球した場合。(このアウトはフォースアウトである)

ただし、後位の走者がフォースプレイで先にアウトになれば、フォースの状態でなくなり、前位の走者には進塁の義務がなくなるから、身体に触球されなければアウトにはならない。

また、走者が塁に触れた後、余勢でオーバースライドまたはオーバーランした場合には、塁に触れた瞬間に進塁の義務を果たしたことになるから、その走者は身体に触球されなければアウトにはならない。(このアウトはフォースアウトではなく、タッグアウトである)

しかし、進塁の義務の生じた走者が次塁に触れた後、どのような理由にせよ、その塁を捨てて元の塁の方へ離れた場合は、再びフォースの状態におかれるから、野手に身体または進塁すべき塁に触球されれば、その走者はアウトとなる。(このアウトはフォースアウトである)

【原注】 オーバースライド、またはオーバーランは二塁および三塁で起こり、一塁ではこの状態は起こらない。
たとえば、0アウトまたは1アウトで走者一・二塁、もしくは一・二・三塁とする。打球は内野手に飛び、その内野手はダブルプレイを試みた。一塁走者は二塁への送球より早く二塁に触れたが、オーバースライドした。ボールは一塁にリレーされ、打者はアウトになった。一塁手は、二塁走者が離塁しているのを見て二塁に送球して、その走者をアウトにしたが、その間に、他の走者は本塁に入った。〔問〕これはフォースプレイか。打者が一塁でアウトになったとき、フォースプレイでなくなったのか。このプレイ中に、二塁で走者がアウトにされて第3アウトになる前に、本塁に入っていた走者の得点は認められるか。〔答〕フォースプレイではなく、タッグプレイであるから、得点は記録される。

【注1】 本項は、フォースアウトの規定であり、打者が走者となったために、塁にいた走者に進塁の義務が生じたときに、野手が、
① その走者が次の塁に触れる前に、その塁に触球した場合
② その走者が次の塁に触れる前に、その走者に触球した場合
③ その走者が次の塁へ進もうとしないで、元の塁にとどまっているとき、その走者に触球した場合
を指し、特に③の場合は、自己より後位の走者がアウトにならない限り、その塁の占有権はすでに失われているから、たとえその走者が塁に触れていても、野手がその走者に触球すればアウトになる。(5.06b2参照)

【注2】 たとえば、一塁走者が打球とともに走り出して、いったん二塁に触れた後、その打球が飛球としてとらえられようとするのを見て、一塁へ戻ろうとしたとき、フライを落とした野手からの送球を受けた二塁手は、走者が再び二塁に達するまでに二塁に触球した。この場合、はじめに二塁を踏んだことは取り消され、フォースアウトと認められる。

(7) 走者が、フェアボールに、フェア地域で触れた場合。(5.06c6、6.01a11参照)

この際はボールデッドとなり、打者が走者となったために次塁への進塁が許された走者のほかは、得点することも、進塁することも認められない。

インフィールドと宣告された打球が、塁を離れている走者に触れたときは、打者、走者ともにアウトになる。

【例外】 インフィールドフライと宣告された打球が、塁についている走者に触れた場合、その走者はアウトにならず、打者だけがアウトとなる。

【原注】 2人の走者が同一のフェアボールに触れたときは、最初に触れた1人だけがアウトになる。これは打球が走者に触れたとき、ただちにボールデッドとなるからである。

【注1】 打者の打ったフェアボールが、野手に触れる前に走者に触れたときは、走者が守備を妨害しようとして故意に打球に触れた場合(併殺を行なわせまいとして故意に打球を妨害した場合を除く)と、走塁中やむなく触れた場合との区別なく、走者はアウトとなる。
また、いったん内野手に触れた打球に対して守備しようとする野手を走者が妨げたときには、5.09(b)(3)によってアウトにされる場合もある。

【注2】 塁に触れて反転したフェアボールに、走者がフェア地域で触れた場合、その走者はアウトになり、ボールデッドとなる。

【注3】 一度塁に触れて反転したフェアボールが、ファウル地域で走者に触れた場合は、その走者はアウトにはならず、ボールインプレイである。

【注4】 本項でいう〝塁〟とは、飛球が打たれたときの投手の投球当時に走者が占有していた塁をいう。

【注5】 インフィールドフライと宣告された打球が走者に触れた場合は、その走者が塁についていてもいなくても、ボールデッドとなる。

(8) 0アウトまたは1アウトで、走者が得点しようとしたとき、打者が本塁における守備側のプレイを妨げた場合。2アウトであればインターフェアで打者がアウトとなり、得点は記録されない。(6.01a1・3、6.03a3参照)

【注1】 ここにいう〝本塁における守備側のプレイ〟とは、野手(捕手も含む)が、得点しようとした走者に触球しようとするプレイ、その走者を追いかけて触球しようとするプレイ、および他の野手に送球してその走者をアウトにしようとするプレイを指す。

【注2】 この規定は、0アウトまたは1アウトで、走者が得点しようとした際、本塁における野手のプレイを妨げたときの規定であって、走者が本塁に向かってスタートを切っただけの場合とか、一度本塁へは向かったが途中から引き返そうとしている場合には、打者が捕手を妨げることがあっても、本項は適用されない。
たとえば、捕手がボールを捕らえて走者に触球しようとするプレイを妨げたり、投手が投手板を正規に外して、走者をアウトにしようとして送ったボール(投球でないボール)を打者が打ったりして、本塁の守備を妨げた場合には、妨害行為を行なった打者をアウトにしないで、守備の対象である走者をアウトにする規定である。

【注3】 本項は、本塁の守備を妨げたのが打者であった場合に限って適用されるのであって、打撃を完了して打者から走者となったばかりで、まだアウトにならない打者が妨害を行なったときには適用されない。たとえば、スクイズバントをした打者が、バントした打球に触れるか、または打球を処理しようとする野手の守備を妨げたために、三塁走者が本塁でのアウトを免れることになったような場合には、打者はすでに走者となっているから、5.09(a)(7)、5.09(b)(3)によって、その打者走者がアウトとなり、ボールデッドとなって、三塁走者を投手の投球当時すでに占有していた塁、すなわち三塁へ帰らせる。
打者が第3ストライクの宣告を受けただけで、まだアウトにならないとき、および四球の宣告を受けたときの妨害に関しては、6.01(a)(1)〔注〕に示されている。

(9) 後位の走者がアウトとなっていない前位の走者に先んじた場合。(後位の走者がアウトとなる)

【原注】 後位の走者の行動または前位の走者の行動によって、後位の走者は前位の走者に先んじたとみなされる場合がある。
例──1アウト走者二・三塁のとき、三塁走者(前位の走者)が本塁へ進塁しようとして三塁本塁間のランダウンプレイとなった。二塁走者(後位の走者)は前位の走者がタッグアウトになると思い、三塁に進んだ。三塁走者は触球されずに、三塁に戻り、左翼方向に塁を踏み越えてしまった。このとき、後位の走者は、前位の走者の行動によって前位の走者に先んじたことになる。結果として、後位の走者はアウトとなり、三塁は占有されていないことになる。前位の走者が三塁を放棄してアウトと宣告されていない限り、前位の走者はアウトになる前に三塁に戻れば三塁を占有する権利がある。5.06(a)(1)参照。

【注1】 ボールインプレイ中に起きた行為(たとえば、悪送球、ホームランまたは柵外に出たフェアヒットなど)の結果、走者に安全進塁権が認められた場合にも、本項は適用される。

【注2】 本項は、走者の位置が入れ代わったときに、後位の走者がアウトにすることを意味し、たとえば、二塁の走者を甲、一塁の走者を乙とすれば、一塁走者乙が二塁走者甲を追い越したときはもちろん、逆走の際など、二塁走者甲が一塁走者乙を追い越す形をとって、本来本塁から遠くにあるべき乙と、近くにあるべき甲との位置が入れ代わった場合でも、常に後位の乙がアウトになることを規定している。

(10) 走者が正規に塁を占有した後に塁を逆走したときに、守備を混乱させる意図、あるいは試合を愚弄する意図が明らかであった場合。
この際、審判員はただちにタイムを宣告して、その走者にアウトを宣告する。

【原注】 走者がまだ占有していない塁に到着した後、飛球が捕らえられたと思ったり、元の占有塁に帰るようにおびき出されて元の塁に帰ろうとした場合、途中で触球されればアウトになる。しかし、元の占有塁に帰りついたら、その塁についている限り、触球されてもアウトにはならない。

【注】 たとえば、一ゴロを打った打者が一塁手の触球を避けようとして、側方に離れて走らない限り、逆走するようなことはさしつかえないが、本塁に達するとアウトになる。

(11) 走者が一塁をオーバーランまたはオーバースライドした後、ただちに一塁に帰塁しなかった場合。

一塁をオーバーランまたはオーバースライドした走者が二塁へ進もうとする行為を示せば、触球されればアウトとなる。

また、一塁をオーバーランまたはオーバースライドした走者が、ただちに帰塁しないでダッグアウトまたは自己の守備位置に行こうとした場合も、野手が走者または塁に触球して、アピールすればアウトとなる。

【原注】 2アウト後、一塁に触れてオーバーランしたが、審判員によって〝セーフ〟の宣告を受けた打者走者は、5.08(a)を適用する上では〝一塁に達した〟ことになり、〝ただちに〟一塁に帰塁しなかったために第3アウトになっても、このプレイ中にアウトよりも先に本塁に達していた走者は、得点として認められる。

(12) 走者が本塁に走り込むか、または滑り込んだ際に、本塁に触れないで、しかも本塁に触れ直そうとしないときに、野手がボールを持って本塁に触れて、審判員にアピールした場合。(5.09c4参照)

【原注】 本項は、本塁に触れなかった走者がベンチに向かっており、アウトにするためには捕手がその走者を追いかければならないような場合に適用される。本塁を踏み損ねた走者が、触球される前に踏み直そうと努力しているような普通のプレイが行なわれているときには適用されない。この場合には、走者は触球されなければアウトにはならない。

(13) 走者を除く攻撃側チームのメンバーが、ある走者に対して行なわれた送球を処理しようとしている野手の守備を妨害した場合。(6.01b参照。走者による妨害については5.09b3参照)

(c) アピールプレイ

次の場合、アピールがあれば、走者はアウトとなる。

(1) 飛球が捕らえられた後、走者が再度の触塁(リタッチ)を果たす前に、身体あるいはその塁に触球された場合。

【原注】 ここでいう〝リタッチ〟とは、捕球後、塁に触れた状態から次塁へスタートすることをいう。
したがって、塁の後方からスタートして、走りながら塁に触れて次塁へ進もうとするいわゆるフライングスタートは、正規なリタッチの方法ではない。このような走者は、アピールがあればアウトとなる。

(2) ボールインプレイのとき、走者が進塁または逆走に際して各塁に触れ損ねたとき、その塁を踏み直す前に、身体あるいは触れ損ねた塁に触球された場合。(5.06b1参照)

【規則説明】 塁を空過した走者は、
(A) 後位の走者が得点してしまえば、その空過した塁を踏み直すことは許されない。
(B) ボールデッドのもとでは、空過した塁の次の塁に達すれば、その空過した塁を踏み直すことは許されない。

【原注】 例──打者が競技場の外へ本塁打を打つか、スタンドに入る二塁打を打って、一塁を空過した(ボールデッド)。──打者は二塁に触れる前ならば、誤りを正すために一塁に帰ることはできる。しかし、二塁に触れてしまうと、一塁に戻ることはできない。守備側がアピールすれば、一塁でアウトが宣告される。
例──打者が遊撃手にゴロを打ち、遊撃手はスタンドに飛び込む悪送球をした(ボールデッド)。──打者は一塁を空過したが、悪送球によって二塁が与えられた。打者走者は、審判員によって二塁が与えられても、二塁に進む前に一塁に触れなければならない。
いずれもアピールプレイである。

【注1】 本項〔規則説明〕(A)は、ボールインプレイとボールデッドとを問わず適用される。

【注2】 本項〔規則説明〕の場合、塁を空過した走者は、アピールがなければアウトにはならない。

【注3】 本塁を空過した走者は、ボールデッドのもとでは、投手が新しいボールか、元のボールを持って正規に投手板に位置すれば、本塁を踏み直すことは許されない。

【注4】 本項〔規則説明〕は、飛球が捕らえられたときのリタッチが早かった走者にも適用される。

(3) 走者が一塁をオーバーランまたはオーバースライドした後、ただちに帰塁しないとき、一塁に帰塁する前に身体または塁に触球された場合。(5.09b11参照)

(4) 走者が本塁に触れず、しかも本塁に触れ直そうとしないとき、本塁に触球された場合。(5.09b12参照)

本項規定のアピールは、投手が打者へ次の1球を投じるまで、または、たとえ投球しなくてもその前にプレイをしたりプレイを企てるまでに行なわれなければならない。

イニングの表または裏が終わったときのアピールは、守備側チームのプレーヤーが競技場を去るまでに行なわれなければならない。

アピールは、その消滅の基準となるプレイまたはプレイの企てとはみなさない。

投手がアピールのために塁に送球し、スタンドの中などボールデッドの個所にボールを投げ込んだ場合には、同一走者に対して、同一塁についてのアピールを再びすることは許されない。

第3アウトが成立した後、ほかにアピールがあり、審判員が、そのアピールを支持した場合には、そのアピールアウトが、そのイニングにおける第3アウトとなる。

また、第3アウトがアピールによって成立した後でも、守備側チームは、このアウトよりもほかに有利なアピールプレイがあれば、その有利となるアピールアウトを選んで、先の第3アウトと置きかえることができる。

〝守備側チームのプレーヤーが競技場を去る〟とあるのは、投手および内野手が、ベンチまたはクラブハウスに向かうために、フェア地域を離れたことを意味する。

【5.09c原注】 2人の走者がほぼ同時に本塁に達し、前位の走者が本塁を空過、しかし後位の走者が本塁に触れていた場合、前位の走者はタッグまたはアピールされればアウトになる。それが第3アウトにあたる場合、後位の走者の得点は5.09(d)により認められない。
アピールするときに、投手がボークをした場合には、その消滅の基準となるプレイとみなされる。
アピールは言葉で表現されるか、審判員にアピールとわかる動作によって、その意図が明らかにされなければならない。プレーヤーがボールを手にして塁に何げなく立っても、アピールをしたことにはならない。アピールが行なわれているときは、ボールデッドではない。

【注1】 アピール権消滅の基準となるプレイには、投手のプレイはもちろん、野手のプレイも含まれる。たとえば打者がワンバウンドで外野席に入る安打を放って二塁に達したが、途中一塁を空過していた。プレイ再開後、投手が一塁へアピールのために送球したところ、悪送球となって、プレイングフィールド内を転々とした。これを拾った一塁手が一塁でアピールすることはできるが、二塁走者がその悪送球を利して三塁へ走ったのを見て三塁へ送球してしまえば、一塁でのアピール権は消滅する。

【注2】 投手または野手のアピールのための送球がボールデッドの個所に入った場合、それはプレイの企てとみなされ、アピール権は消滅する。したがって、その後、いずれの塁、いずれの走者に対してもアピールは許されない。

【注3】 攻守交代の場合と試合終了の場合との区別なく、いずれの場合でも投手および内野手が、フェア地域を離れたときに、アピール権が消滅することとする。
アマチュア野球では、試合終了の場合に限って、両チームが本塁に整列したとき、アピール権は消滅することとする。

【注4】 アピールするには、言葉と動作とで、はっきりとその旨を表示しなければならない。
なお、ある一つの塁を2人以上の走者が通過した際、その塁の空過を発見しアピールするには、どの走者に対するアピールであるかを明示しなければならない。たとえば、甲、乙、丙の3人の走者が、三塁を通過し、乙が三塁を踏まなかったときは、乙に対するアピールである旨を明示しなければならないが、もしこのとき甲が空過したと誤って申し出て、審判員に認められなかった場合でも、その塁を通過した走者の数までは、アピールを繰り返して行なうことができる。

【問】 1アウト走者一・三塁のとき、打者は外野に大飛球を打ったので、2人の走者はともに進塁しはじめたが、外野手はこの飛球を好捕した。離塁の少なかった三塁走者は三塁に帰って捕球後あらためて本塁に入った。一塁走者は二塁に触れた後に三塁近くまで行ったが、一塁に帰ろうと逆走しはじめたので、外野手は二塁に送球、二塁手は一塁走者が二塁に触れる前に、塁上でボールを持ってアピールした。ダブルプレイか。

【答】 ダブルプレイではない。その走者が一塁に帰るためには二塁を通る必要があるからといって、二塁に触球してもアウトにはできない。その走者に触球するか、または進塁の起点となる塁、すなわち一塁に触球しなければ、アウトにはできない。

【問】 1アウト走者一塁のとき、打者が外野へ大飛球を打ち、走者が二塁を回って三塁近くまで行ったとき、飛球が捕らえられたので、二塁に触れないで一塁へ帰ろうとした。どんな方法でアピールすれば走者をアウトにできるか。

【答】 走者に触球するか、二塁または一塁に触球してアピールすればよい。

【問】 2アウト走者二塁のとき、打者が三塁打を打ち、走者を得点させたが、打者は一塁も二塁も踏まなかった。守備側は二塁に触球してアピールし、アウトが宣告された。得点となるか。

【答】 得点は認められる。しかし守備側が最初から一塁でアピールしておけば、得点は認められない。また二塁から一塁に転送球して再びアピールすれば、一塁でのアピールアウトを、先の第3アウトと置きかえることができるから、得点とはならない。

【問】 1アウト走者一・二塁、打者が右翼へ大飛球を打ったとき、安打になると思った2人の走者は、フライが飛んでいる間進塁し続け、右翼手がこれを捕らえたにもかかわらず、二塁走者はそのまま本塁を踏んだ。しかし一塁走者は捕球されたのを見て一塁に引き返そうとした。右翼手は一塁へ送球、一塁手は一塁走者が帰塁するより先に、塁に触球して、アウトにした。二塁走者は、一塁走者が一塁でアウトになるより先に、本塁を踏んでいるが、その得点は認められるか。

【答】 守備側が二塁でアピールしない限り、二塁走者の得点は認められる。しかし、守備側は、アピールによる第3アウトの成立後であっても、このアウトよりも有利となるアピールアウトを先の第3アウトと置きかえることができるから、二塁でアピールすれば、リタッチを果たしていない二塁走者はアウトとなり、得点とはならない。

(d) 前位の走者の触塁失敗

0アウトまたは1アウトのとき、前位の走者が、ある塁に触れ損ねるか、リタッチを果たさなかったとしても、正しく各塁に触れて進んだ後位の走者は、前位の走者の責を負ってその正しい走塁を取り消されることはない。

ただし、2アウト後、前位の走者がアピールによって3人目のアウトとなったときには、後位の走者が正規に本塁に触れていても、その走者の得点は認められない。また、その第3アウトがフォースアウトの形をとったときには、他のすべての走者が正規に本塁に触れていても、その得点は認められない。

(e) 攻守交代

攻撃側チームは、3人のプレーヤーが正規にアウトにされると守備につき、その相手チームが攻撃に移る。

5.10 プレーヤーの交代

(a) プレーヤーの交代は、試合中ボールデッドのときなら、いつでも許される。代わって出場したプレーヤーは、そのチームの打撃順に従って、退いたプレーヤーの順番を受け継いで打つ。

(b) 監督は、プレーヤーの交代があった場合には、直ちにその旨を球審に通告し、あわせて打撃順のどこに入れるかを明示しなければならない。

【原注】 守備側のチームがプレーヤーが2人以上同時に代わって出場したときは、その代わって出場したプレーヤーが守備位置に着く前に、監督はただちにそのプレーヤーの打撃順を球審に示し、球審はこれを公式記録員に通告する。
この通告がなかったときは、球審は、代わって出場したプレーヤーの打撃順を指定する権限を持つ。
ダブルスイッチ(投手交代と同時に野手も交代させて、打撃順を入れ替える)の場合、監督はファウルラインを越える前に、まず球審に複数の交代と入れ替わる打撃順を通告しなかればならない。監督またはコーチがファウルラインを越えたら、それ以後ダブルスイッチはできない。
試合から退いたプレーヤーは、ベンチに入って、そのチームとともに残ることはできる。また、投手のウォームアップの相手をすることもできる。プレーヤー兼監督が控えのプレーヤーと代わって退いた場合、ベンチまたはコーチスボックスから指揮を続けることはできる。
審判員は、試合から退いてベンチに残ることを許されたプレーヤーが相手チームのプレーヤー、監督または審判員に対して、やじをとばすことは許さない。

【注】 我が国では、本項〔原注〕の〝ダブルスイッチ〟以下の段については、所属する団体の規定に従う。

(c) 交代通告を受けた球審は、ただちにその旨を自ら発表するか、または発表させる義務がある。

(d) いったん試合から退いたプレーヤーは、その試合には再び出場することはできない。すでに試合から退いたプレーヤーが、何らかの形で、試合に再出場しようとしたり、または再出場した場合、球審はその不正に気付くか、または他の審判員あるいはいずれかのチームの監督に指摘されたら、ただちに当該プレーヤーを試合から除くよう監督に指示しなければならない。その指示がプレイの開始前になされたときは、退いたプレーヤーに代わって出場しているべきプレーヤーの出場は認められる。しかし、その指示がプレイの開始後になされたときは、すでに試合から退いているプレーヤーを試合から除くと同時に、退いたプレーヤーに代わって出場しているべきプレーヤーも試合から退いたものとみなされ、試合に出場することはできない。プレーヤー兼監督に限って、控えのプレーヤーと代わってラインアップから退いても、それ以後コーチスボックスに出て指揮することは許される。

守備側のチームのプレーヤーが2人以上同時に交代する場合、監督はその代わって出場したプレーヤーが守備位置につく前に、速やかにそれぞれの打撃順に示し、球審はこれを公式記録員に通告しないければならない。

球審は、ただちに通知がなされなかったときは、球審が代わって出場したプレーヤーの打撃順を指定する権限を持つ。

【原注】 同一イニングでは、投手が一度ある守備位置についたら、再び投手となる以外他の守備位置に移ることはできないし、投手に戻ってから投手以外の守備位置に移ることもできない。
投手以外の負傷退場した野手に代わって出場したプレーヤーには、5球を限度としてウォームアップが許される。(投手については、5.07bに規定がある)
すでに試合から退いているプレーヤーが試合に出場中に起こったプレイは、いずれも有効である。プレーヤーが試合から退いたことを知っていながら再出場したと審判員が判断すれば、審判員は監督を退場させることができる。

【注】 アマチュア野球では、試合から退いたプレーヤーが、ベースコーチとなることを認めることもある。

(e) 打順表に記載されているプレーヤーは、他のプレーヤーの代走をすることは許されない。

【原注】 この規定は、〝コーティシーランナー〟(相手の好意で適宜に許される代走者)の禁止を意味している。試合に出場しているプレーヤーは、他のプレーヤーのために、コーティシーランナーになることを許されず、いったん試合から退いたプレーヤーも同様である。打順表に記載されていないプレーヤーでも、一度走者として出たならば、代わって出場したプレーヤーとみなす。

(f) 4.03(a)、同(b)の手続きによって球審に手渡された打順表に記載されている投手は、第1打者またはその代打者がアウトになるかあるいは一塁に達するまで、投球する義務がある。ただし、その投手が負傷または病気のために、投球が不可能になったと球審が認めた場合を除く。

(g) ある投手に代わって救援に出た投手は、そのときの打者または代打者がアウトになるか一塁に達するか、あるいは攻守交代になるまで、投球する義務がある。ただし、その投手が負傷または病気のために、それ以降投手としての競技続行が不可能になったと球審が認めた場合を除く。

以下はマイナーリーグで適用される。先発投手または救援投手は、打者がアウトになるか、一塁に達するかして、登板したときの打者(または代打者)から連続して最低3人の打者に投球するか、あるいは攻守交代になるまで、投球する義務がある。ただし、その投手が負傷または病気のために、それ以降投手としての競技続行が不可能になったと球審が認めた場合を除く。

【注】 本項後段については、メジャーリーグでも適用されるが、我が国では適用しない。

(h) 規則で代わることが許されていない投手に代わって他のプレーヤーが出場した場合には、審判員は、規則を正しく適用するために、正規の投手に試合に戻ることを命じなければならない。

万一、誤って出場した投手が、指摘されないまま打者へ1球を投げるか、または塁上の走者がアウトになった場合には、その投手は正当化されて以降のプレイはすべて有効となる。

【原注】 監督が規則に違反して投手を退かせようとしたときには、審判員はその監督に不可能である旨を通告しなければならない。たまたま、球審が看過して規則で許されていない投手の出場を発表してしまった場合でも、その投手が投球する前なら正しい状態に戻すことができる。万一、誤って出場した投手が1球を投じてしまえば、その投手は正規の投手となる。

(i) すでに試合に出場している投手がイニングの初めにファウルラインを越えてしまえば、その投手は、第1打者がアウトになるかあるいは一塁に達するまで、投球する義務がある。ただし、その打者に代打者が出た場合、またはその投手が負傷または病気のために、投球が不可能になったと球審が認めた場合を除く。

また、投手が塁上にいるとき、または投手の打席で前のイニングが終了して、投手がダッグアウトに戻らずにマウンドに向かった場合は、その投手は、準備投球のために投手板を踏まない限り、そのイニングの第一打者に投球する義務はない。

(j) 交代発表のなかったプレーヤーの取り扱い

代わって出場したプレーヤーは、たとえ発表がなくとも、次のときから、試合に出場したものとみなされる。

  1. 投手ならば、投手板上に位置したとき。
  2. 打者ならば、バッタースボックスに位置したとき。
  3. 野手ならば、退いた野手の普通の守備位置についてプレイが始まったとき。
  4. 走者ならば、退いた走者が占有していた塁に立ったとき。

本項で、出場したものと認められたプレーヤーが行ったプレイ、およびそのプレーヤーに対して行われたプレイは、すべて正規のものとなる。

(k) 両チームのプレーヤーおよび控えのプレーヤーは、実際に競技にたずさわっているか、競技に出る準備をしているか、あるいは一塁または三塁のベースコーチに出ている場合を除いて、そのチームのベンチに入っていなければならない。

プレーヤー、監督、コーチ、トレーナーおよび試合中にベンチやブルペンに入ることを許されたクラブ関係者は、実際に競技にたずさわっているか、競技に出る準備をしているか、その他許される理由以外で、競技場に出ることはできない。

ペナルティー 本項に違反したときは、審判員は、警告を発した後、その反則者を競技場から除くことができる。

【注1】 次打者席には、次打者またはその代打者以外は入ってはならない。

【注2】 ベンチあるいはダッグアウトに入ることのできる者に関しては、プロ野球では各リーグの規約によって定め、アマチュア野球では協会、連盟ならびに大会などの規約に基づいて定めている。

(l) 監督・コーチがマウンドに行ける回数

プロフェッショナルリーグは、監督またはコーチが投手のもとへ行くことに関して、次の制限を適用しなければならない。

(1) この項は、監督またはコーチが、1イニングに同一投手のもとへ行ける回数を制限する規則である。

(2) 監督またはコーチが、1イニングに同一投手のもとへ2度目に行けば、その投手は自動的に試合から退かなければならない。

(3) 監督またはコーチは、そのときの打者が打撃を続けている限り、再びその投手のもとへ行くことはできない。

(4) 攻撃側がその打者に代打者を出した場合には、監督またはコーチは再びその投手のもとへ行ってもよいが、その投手は試合から退かなければならない。

監督またはコーチが投手のもとへ行った後、投手板を囲んでいる18㌳の円い場所を離れたら、1度行ったことになる。

【5.10原注】 監督(またはコーチ)が、捕手または内野手のところへ行き、その野手がそのままマウンドに行ったり、投手が、守備位置にいるその野手のところへ行ったときは、監督(またはコーチ)がマウンドに行ったものと同様に扱われる。ただし、1球が投じられた後、またはプレイが行われた後は、この限りではない。
監督(またはコーチ)が、捕手または内野手のところへ行き、その野手が投手と相談するためにマウンドに行って、規則の適用をのがれようとしたり、規則を出し抜こうとするいかなる企ても、すべてマウンドへ行った回数に数えられる。
コーチがマウンドに行って、投手を退け、新しく出てきた投手に指示を与えるために監督がマウンドに行ったときは、そのイニングで新しい投手のもとへ1度行ったことになる。
監督がすでに1度投手のもとへ行っているので、同一イニングで同一投手へ、同一打者のときには、もう1度行くことはできないと審判員が警告したにもかかわらず、監督が行った場合、その監督は試合から除かれ、投手はただちに退かないでその打者がアウトになるか、走者になるまで投球し、その義務を果たした後に試合から退かなければならない。この場合、監督は、その投手は1人の打者に投球したら交代しなければならなのだから、リリーフ投手にウォームアップさせておかなければならない。リリーフ投手は、審判員の適宜な判断において、必要な準備投球が許される。
投手が負傷を受けたとき、監督がその投手のもとへ行きたいときには、審判員にその許可を要請することができる。許可があれば、マウンドに行く回数には数えられない。

【注1】 我が国では本項にある、〝投手板を囲んでいる18㌳の円い場所〟を〝ファウルライン〟と置き換えて適用する。

【注2】 監督(またはコーチ)が投手のもとへ行った後、ファウルラインを越えて引き上げたら、その投手は、そのときの打者がアウトになるか、走者になるか、または攻守交代になるまで投球した後でなければ退くことはできない。ただし、その打者に代打者が出た場合は、この限りではない。

【注3】 監督(またはコーチ)が投手のもとへ行った回数を数えるにあたって、イニングの途中で投手交代の通告が行なわれた後、プレイが再開されるまでに新しく出てきた投手のもとへ監督(またはコーチ)が行った場合、監督(またはコーチ)がマウンドに行って投手を退け、そのままとどまって新しく出てきた投手に指示を与えて引き上げた場合、いずれも1度とは数えないが、次の場合は、いずれも監督(またはコーチ)が投手のもとへ行った回数として数える。
① 監督(またはコーチ)がファウルライン近くまできて投手に指示を与えた場合。ただし、ファウルライン近くまできたが、投手に指示を与えることもなくそのまま思い直して引き返した場合を除く。
② 投手の方からファウルラインを越えて、監督(またはコーチ)の指示を受けた場合。
③ コーチがマウンドに行って投手を退け、ファウル地域まで戻ってきて監督と打ち合わせてから、新しく出てきた投手のもとへ行った場合。

【注4】 コーチ(または監督)が、マウンドに行って投手を退け、新しく出てきた救援投手に指示を与えるために監督(またはコーチ)がマウンドに行った後、そのときの打者に代打者が出されたとき、監督(またはコーチ)が再びその投手のもとへ行くことは許されるが、その投手はただちに試合から退くことはできず、その代打者がアウトになるか、走者になるか、攻守交代になるまで投球した後に、退かなければならない。

【注5】 アマチュア野球では、本項については、各連盟の規定を適用する。

(m) マウンドに行く回数の制限

以下の規則は、メジャーリーグで適用される。マイナーリーグでは、1試合のマウンドに行ける回数について、本項規定と異なる制限を設けてもよいし、制限を設けないこともできる。

(1) 投手交代を伴わないでマウンドに行くことは、9イニングにつき1チームあたり5回に限られる。延長回については、1イニングにつき1回、マウンドに行くことができる。

(2) 監督またはコーチが投手と話すためにマウンドに行った場合、回数に数える。また、野手が投手と相談するために守備位置を離れた場合や投手が野手と相談するためにマウンドを離れた場合も、位置や時間にかかわらず回数に数える。

ただし、すでにマウンドで行われている相談に途中から監督、コーチまたは野手が加わっても、新たな回数には数えない。さらに、次の場合もマウンドに行く回数には数えない。

(A) 打者が打撃を完了して次の打者が打席に入るまでの間、投手と野手がいずれも守備位置から離れずに話し合いが行なわれた場合。

(B) 野手が、投手と話すためでなく、単に雨天時に野手がスパイクの汚れを払うためにマウンドに行った場合。

(C) 投手の負傷、または負傷の可能性があるために、野手がマウンドに行った場合。

(D) 攻撃側チームによる選手交代の通告後、投手が次の1球を投じるか、または、プレイをする前に、野手がマウンドに行った場合。

(E) 審判員のタイム(たとえば、審判員や選手が負傷したり、観客、物体、または球場整備員がフィールド上に現れたり、あるいは監督がリプレイ検証を要求したときなど)による試合の中断の際、野手が試合の再開を遅らせることなく、マウンドに行った場合。

(F) フェンス越えの本塁打を打たれた後に、野手がマウンドに行った場合。ただし、打者走者が本塁に達する前には自分の守備位置に戻らなければならない。

(G) イニングの間および投手交代の間に適用された時間制限の中で、野手がマウンドに行った場合。

(3) サインの確認──1試合(または延長回)で決められたマウンドに行くことができる回数を使い果たした後に、捕手が出したサインについて投手と意志の確認ができていないと球審が判断した場合には、捕手からの要求があれば球審は捕手に少しだけマウンドに行くことを認めてもよい。決められた制限回数を使い果たす前にサインの確認のためにマウンドに行った場合は、回数に数える。

(4) マウンドに行く回数制限の施行──監督またはコーチが、チームに与えられたマウンドに行ける回数を使い果たした後に、マウンドに向かうためにファウルラインを越えてしまえば、その救援投手の第1打者が打撃中でない限り、その投手を交代させなければならない。もし第1打者の打撃中であれば、規則5.10(g)により、その打者が打撃を完了するまで投げ続けなければならない。

監督またはコーチが、マウンドに行く回数に例外が適用されると思う場合は、ファウルラインを超える前に審判員に確認しなければならない。

本規則の運用によって突発的な投手交代を行なわなければならないとき、救援投手がブルペンでウォームアップをしていなかった場合、監督またはコーチは、マウンドに行く回数制限を超えて違反したことにより、試合から退けられる。この場合、審判員は、その救援投手に対して、試合に出場するために必要な準備の時間を与えることができる。

野手が、チームに与えられたマウンドに行ける回数を使い果たした後に、審判員に自分の守備位置に戻るように注意されたにもかかわらずマウンドへ行けば、その野手は試合から退けられる。しかし、この場合、投手交代の必要はない。

【注】 我が国では、(m)項については、所属する団体の規定に従う。

5.11 指 名 打 者

(a) 指名打者ルールは次のとおりである。

(1) 先発投手または救援投手が打つ番のときに他の人が代わって打っても、その投球を継続できることを条件に、これらの投手に代わって打つ打者を指名することが許される。

投手に代わって打つ指名打者は、試合開始前に選ばれ、球審に手渡す打順表に記載されなければならない。監督が打順表に10人のプレーヤーを記載したが、指名打者の特定がされておらず、球審がプレイを宣告する前に、審判員またはいずれかの監督(またはその指名する者)がその誤りに気づいたときは、球審は、監督に投手以外の9人のプレーヤーのうち誰が指名打者になるのかを特定するように命じる。

【原注】 指名打者特定の明らかな誤りは、試合開始前であれば訂正することができる。(4.03〔原注〕参照)

(2) 試合開始前に交換された打順表に記載された指名打者は、相手チームの先発投手に対して、少なくとも1度は、打撃を完了しなければ交代できない。ただし、その先発投手が交代したときは、その必要なはい。

(3) チームは必ずしも投手に代わる指名打者を指名しなくてもよいが、試合前に指名しなかったときは、その試合で指名打者を使うことはできない。

(4) 指名打者に代えて代打者を使ってもよい。指名打者に代わった打者は以後指名打者となる。退いた指名打者は再び試合に出場できない。

(5) 指名打者が守備についてもよいが、自分の番のところで打撃を続けなければならない。したがって、投手は退いた守備者の打順表を受け継ぐことになる。ただし、2人以上の交代が行なわれたときは、監督が、打撃順を指名しなければならない。

(6) 指名打者に代わって代走者が出場することができるが、その走者が以後指名打者の役割を受け継ぐ。指名打者が代走者になることはできない。

(7) 指名打者は、打順表の中でその番が固定されており、多様な交代によって指名打者の打撃の順番を変えることは許されない。

(8) 投手が一度他の守備位置についた場合、それ以後指名打者の役割は消滅する。

(9) 代打者が試合に出場してそのまま投手となった場合、それ以後指名打者の役割は消滅する。

(10) 投手が指名打者に代わって打撃するかまたは走者になった場合、それ以後指名打者の役割は消滅する。試合に出場している投手は、指名打者に代わってだけ打撃または走者になることができる。

(11) 監督が打順表に10人のプレーヤーを記載したが、指名打者が特定されておらず、試合開始後に、相手チームの監督がその誤りを球審に指摘した場合は、

(A) チームが守備についた後では、投手は、守備につかなかったプレーヤーの打撃順に入る。

(B) チームがまだ守備についていないときには、投手は、そのチームの監督が指定した打撃順に入る。

いずれの場合も、投手が置きかわったプレーヤーは交代したとみなされ、試合から退き、それ以後指名打者の役割は消滅する。誤りが球審に指摘される前に起きたプレイは、6.03(b)により、有効となる。

(12) 指名打者が守備位置についた場合それ以後指名打者の役割は消滅する。

(13) 指名打者に代わって出場させようとするプレーヤーは、指名打者の番がくるまで届け出る必要なない。

(14) 他の守備位置についていたプレーヤーが投手になれば、それ以後指名打者の役割は消滅する。

(15) 指名打者は、ブルペンで捕手を務める以外は、ブルペンに座ることはできない。

(b) チームは投手に代わる打者を指名する義務はない。しかしながら、先発投手自身が打つ場合には、本項(a)項により、別々の2人として考えることができる。監督は自分のチームの打順表に10人のプレーヤーを記載し、このプレーヤーにおいて、一つは先発投手、もう一つは指名打者として2度、同じ名前を記載することになる。もしこのプレーヤーが投手を退いたとしても、指名打者としては出場し続けることはできるが、再び投手として出場することはできない。また、このプレーヤーが指名打者を退けば、投手として出場し続けることはできるが、再び打者として打席に立つことはできない。

このプレーヤーが投手と指名打者両方を同時に退くことになった場合、それに置き換わる投手と指名打者両方の役割を満たす他のプレーヤーに代わることはできない。チームにおいて、先発投手自身が指名打者としても打つことができる本規定を採用するかは、最初の打順表で記載するときにのみできる。

本条(a)項にもかかわらず、その投手が指名打者として打つかまたは走者になったとしても、チームに対する指名打者の役割は消滅しない。また、その指名打者が投手の役割を引き受けた場合においても、その役割は消滅しない。しかし、そのプレーヤーが投手として降板し、投手以外の守備位置に移った場合には、それ以降指名打者の役割は消滅する。

【5.11注】 我が国では、指名打者ルールについては、所属する団体の規定に従う。

5.12 〝タイム〟の宣告

(a) 審判員が試合を停止するときは〝タイム〟を宣告する。球審が〝プレイ〟を宣告したときに停止状態は終わり、競技が再開される。タイムの宣告からプレイの宣告までの間、試合は停止される。

(b) 審判員が〝タイム〟を宣告すれば、ボールデッドとなる。

次の場合、球審はタイムを宣告しなければならない。

(1) 天候、暗さのためなどで、これ以上試合を続行するのは不可能であると球審が認めた場合。

(2) ライトの故障のために、審判員がプレイを見るのに困難となるか不可能となった場合。

【付記】 各リーグは、ライトの故障により試合が中断された場合の特別規則を、独自に設けてもよい。

【注1】 プレイの進行中にライトの故障が生じたとき、その瞬間完了されていないプレイは無効とする。ダブルプレイおよびトリプルプレイが行われている間に、ライトの故障が生じた場合には、たとえ最初のアウトが成立した後であっても、そのプレイは完成されたものとはみなされない。
ライトが復旧したときには、ライトの故障のために無効とされたプレイが始まる前の状態から再開しなければならない。

【注2】 打球、投手の投送球または野手の送球が5.06(b)(4)に規定される状態となったとき、および四球、死球、ボーク、捕手またはその他の野手の妨害、走塁妨害などで走者が安全に進塁できる状態となったときにライトが消えた場合に限って、たとえ各走者の走塁が完了していなくても、そのプレイは有効となる。

【注3】 プレイが行われているとき、一部のライトが消えた場合(たとえば電圧が急に低下した場合とか、1、2基が故障を起こした場合)などには、ただちにタイムとするか、またはプレイが終了するまでボールインプレイの状態におくかは、審判員の判断で決定する。

(3) 突発事故により、プレーヤーがプレイできなくなるか、あるいは審判員がその職務を果たせなくなった場合。

プレイングフィールドの外への本塁打、または死球の場合のように、1個またはそれ以上の安全進塁権が認められた場合、走者が不慮の事故のために、その安全進塁権を行使することができなくなったときは、その場から控えのプレーヤーに代走させることができる。

(4) 監督がプレーヤーを交代させるため、またはプレーヤーと協議するために〝タイム〟を要求した場合。

【注】 監督は、プレイが行なわれていないときに、〝タイム〟を要求しなければならない。投手が投球動作に入ったときとか、走者が走っている場合などのように、プレイが始まろうとしているとき、またはプレイが行われているときには、〝タイム〟を要求してはならない。
もし、このような要求があっても、審判員は、〝タイム〟を宣告してはならない。なお、〝タイム〟が発効するのは、〝タイム〟が要求されたときではなく、審判員が〝タイム〟を宣告した瞬間からである。

(5) 審判員がボールを検査する必要を認めるか、監督と打ち合わせをするためか、またはこれに準ずる理由のある場合。

(6) 野手が飛球を捕らえた後、ボールデッドの個所に踏み込んだり、倒れ込んだ場合。各走者は、アウトにされるおそれなく、野手がボールデッドの個所に入ったときの占有塁から1個の進塁が許される。

(7) 審判員がプレーヤーまたはその他の人に、競技場から去ることを命じた場合。

(8) 審判員はプレイの進行中に、〝タイム〟を宣告してはならない。ただし、(2)項、または(3)項後段に該当するときは、この限りではない。

ボールデッドになった後、投手が新しいボールか、元のボールを持って正規に投手板に位置して、球審がプレイを宣告したときに、競技は再開される。

投手がボールを手にして投手板に位置したら、球審はただちにプレイを宣告しなければならない。

6.00 反則行為

6.01 妨害・オブストラクション・本塁での衝突プレイ

(a) 打者または走者の妨害

次の場合は、打者または走者によるインターフェアとなる。

(1) 捕手に捕球されていない第3ストライクの後、打者走者が投球を処理しようとしている捕手を明らかに妨げた場合。

打者走者はアウトになり、ボールデッドとなって、他の走者は投手の投球当時占有していた塁に戻る。

もし、捕球されずに本塁周辺にとどまっている投球が、打者または審判員によって不注意にそらされた場合、ボールデッドとなって、塁上の走者は投手の投球当時占有していた塁に戻る。この投球が第3ストライクのときは、打者はアウトになる。

【原注】投球が、捕手または審判員に触れて進路が変わり、その後に打者走者に触れた場合は、打者走者が投球を処理しようとしている捕手を明らかに妨げたと審判員が判断しない限り、妨害とはみなされない。

【注】①第3ストライクの宣告を受けただけでまだアウトになっていないか、または四球の宣告を受けて1塁へ進むべき打者走者が、三塁からの走者に対する捕手の守備動作を明らかに妨害した場合は、その打者走者をアウトとし、三塁からの走者は、投手の投球当時占有していた三塁へ帰らせる。その他の各走者も、同様に帰塁させる。
②第3ストライクの宣告を受けて5.09(a)(2)または同(3)でアウトになった打者が、三塁走者に対する捕手の守備動作を明らかに妨害したときは、6.01(a)(5)によって三塁から走ってきた走者もアウトにする。
③②の場合で、重盗を防ごうとする捕手の守備動作を明らかに妨害したときは、その対象となった走者をアウトとして、他の走者は妨害発生の瞬間にすでに占有していた塁へ帰らせる。もしも、捕手の守備動作がどの走者に 対してなされたかが明らかでない場合には、本塁に近い走者をアウトにする。(6.01a5〔注〕参照)

(2) 打者または走者が、まだファウルと決まらないままファウル地域を動いている打球の進路を、どんな方法であろうとも故意に狂わせた場合。(5.09a9参照)

 (3) 0アウトまたは1アウトで、走者三塁のとき、打者が本塁における野手のプレイを妨げた場合。
この場合、走者がアウトになるが、2アウト後の場合は打者がアウトになる。(5.09b8、6.03a3・4参照)

【注】本項は、5.09(b)(8)と異なる文字を用いているにすぎないから、ただ離塁しているにすぎない三塁走者をアウトにしようとする捕手のプレイを打者が妨げた場合などには、適用されない。

 (4) 1人または2人以上の攻撃側メンバーが、走者が達しようとする塁に接近して立つか、あるいは、その塁の付近に集合して守備側を妨げるか、惑乱させるか、ことさらに守備を困難にした場合、その走者は味方のメンバーが相手の守備を妨害(インターフェア)したものとしてアウトを宣告される。

(5) アウトになったばかりの打者または走者、あるいは得点したばかりの走者が、味方の走者に対する野手の次の行動を阻止するか、あるいは妨げた場合は、その走者は、味方のプレーヤーが相手の守備を妨害(インターフェア)したものとして、アウトを宣告される。(5.09a13参照)

【原注】打者または走者が、アウトになった後、進塁を続けたり、帰塁したり、正規の占有していた塁に戻ろうと試みたりしても、その行為だけでは、野手を惑乱したり、邪魔したり、または遮ったものとはみなされない。

【注】本項を適用するにあたって、2人または3人の走者がいる場合、妨げられた守備動作が直接1人の走者に対して行なわれようとしていたことが判明しているときは、その走者をアウトにし、どの走者に対して守備が行なわれようとしていたか判定しにくいときは、本塁に最も近い走者をアウトにする。
前項によって、1人の走者に対してアウトを宣告したときは、ボールデッドとなり、他の走者は守備妨害の行なわれた瞬間すでに占有していた塁に帰らせる。
ただし、打球を直接処理した野手が打者走者に対して守備を行なわず、他の走者に対して行なおうとした守備が妨害された場合には、その走者をアウトにし、その他の走者は、投手の投球当時占有していた塁へ戻らせる。しかし打者走者だけは、再びバッタースボックスに帰せないから、1塁の占有を許す。
なお、打者が走者となって一塁へ進んだために、走者に一塁を明け渡す義務が生じたときは、その走者を2塁へ進ませる。たとえば、0アウト満塁のとき、打者が遊ゴロして、三塁からの走者がフォースアウトにされ、その際、その走者が、捕手がさらに三塁にボールを送ってダブルプレイを企てようとするのを、突きとばして妨害したような場合、その走者と三塁に向かった走者とはアウトになるが、打者に一塁が与えられるので、一塁の走者は二塁に進むことが許されるような場合がそれである。

(6) 走者が明らかに併殺を行なわせまいとして故意に打球を妨げるか、または打球を処理している野手を妨害したと審判員が判断したとき、審判員はその妨害をした走者にアウトを宣告するとともに、味方のプレーヤーが相手の守備を妨害したものとして打者走者に対してもアウトを宣告する。この場合、ボールデッドとなって他の走者は進塁することも得点することもできない。

(7) 打者走者が、明らかに併殺を行なわせまいとして故意に打球を妨げるか、または打球を処理している野手を妨害したと審判員が判断したとき、審判員は打者走者に妨害によるアウトを宣告するとともに、どこかで併殺が行なわれようとしていたかには関係なく、本塁に最も近い走者に対してもアウトを宣告する。この場合、ボールデッドとなって他の走者は進塁することはできない。

(8) 三塁または一塁のベースコーチが、走者に触れるか、または支えるかして、走者の三塁または一塁への帰塁、あるいはそれらの離塁を、肉体的に援助したと審判員が認めた場合。

(9) 走者三塁のとき、ベースコーチが自己のボックスを離れて、なんらかの動作で野手の送球を誘致した場合。

(10) 走者が打球を処理しようとしている野手を避けなかったか、あるいは送球を故意に妨げた場合。

ただし、2人以上の野手が接近して、打球を処理しようとしており、走者がそのうち1人か2人以上の野手に接触したときには、審判員はそれらの野手のうちから、本項の適用を受けるのに最もふさわしい位置にあった野手を1人決定して、その野手に触れた場合に限ってアウトを宣告する。(5.09b3参照)

走者がファウルボールに対する守備を妨害したとして、アウトを宣告され、これが第3アウトにあたる場合、打者走者は打撃を完了したものとみなされ、次のイニングの第1打者は次打者となる。(0アウトまたは1アウトのときは、打者はそのまま打撃を続ける。)

【原注】 捕手が打球を処理しようとしているときに、捕手と一塁へ向かう打者走者とが接触した場合は、守備妨害も走塁妨害もなかったとみなされて、何も宣告されない。打球を処理しようとしている野手による走塁妨害は、非常に悪質で乱暴な場合にだけ宣告するべきである。たとえば打球を処理しようとしているからといって、走者を故意につまずかせるようなことをすれば、オブストラクションが宣告される。
捕手が打球を処理しようとしているのに、《他の野手(投手を含む。)》が、一塁へ向かう打者走者を妨害したらオブストラクションが宣告されるべきで、打者走者には一塁が与えられる。

(11) 野手(投手を含む)に触れていないフェアボールが、フェア地域で走者に触れた場合。

ただし、走者がフェアボールに触れても、

(A) いったん内野手(投手を含む)に触れたフェアボールに触れた場合

(B)1人の内野手(投手を除く)に触れないでその股間または側方を通過したフェアボールに、すぐその後方で触れても、この打球に対して、他のいずれの内野手も守備する機会がない場合

には、審判員は走者が打球に触れたという理由でアウトを宣告してはならない。

しかし、内野手が守備する機会を失った打球(内野手に触れたかどうかを問わない)でも、走者が故意にその打球を蹴ったと審判員が認めれば、その走者は、妨害(インターフェア)をしたという理由でアウトの宣告を受けなければならない。(5.06c6、5.09b7参照)

インターフェアに対するペナルティ 走者はアウトになりボールデッドとなる。
審判員が、打者、打者走者または走者に妨害によるアウトを宣告した場合には、他のすべての走者は、妨害発生の瞬間にすでに占有していたと審判員が判断する塁まで戻らなければならない。ただし、本規則で別に規定した場合を除く。
打者走者が一塁に到達しないうちに妨害が発生したときは、すべての走者は投手の投球当時占有していた塁に戻らなければならない。
ただし、0アウトまたは1アウトのとき、本塁でのプレイで走者が得点した後、打者走者がスリーフットレーンの外を走って守備妨害でアウトが宣告されても、その走者はそのままセーフが認められて、得点は記録される。

【注】 前記の〝打者走者が一塁に到達しないうち〟以下の段は、プレイが介在した後に妨害が発生した場合には適用しない。

【原注1】 打球(フェアボールとファウルボールとの区別なく)を処理しようとしている野手の妨げになったと審判員によって認められた走者は、それが故意であったか故意でなかったかの区別なくアウトになる。
しかし、正規に占有を許された塁についていた走者が、フェア地域とファウル地域との区別なく守備の妨げになった場合、審判員がその妨害を故意と判断したときを除いて、その走者はアウトにはならない。審判員が、その妨害を故意と宣告した場合には次のペナルティを科す。
0アウトまたは1アウトのときは、その走者と打者とにアウトを、2アウト後のときは、打者にアウトを宣告する。

【問】 1アウト走者三塁のとき、三塁に触れている走者が、三塁横に上がったファウルフライを捕らえようとする三塁手の守備の妨げになったので、三塁手は捕球できなかった。いかに処置すべきか。

【答】 その走者が故意に守備を妨げたと審判員が認めれば、その走者と打者にアウトを宣告する。

【原注2】 三塁本塁間で狭撃された走者が妨害によってアウトを宣告された場合には、後位の走者はその妨害行為発生以前に、たとえ三塁を占めることがあってもその占有は許されず、二塁に帰らなければならない。また二塁三塁間で挟撃された走者が妨害によってアウトになった場合も同様、後位の走者は一塁に帰らなければならない。妨害が発生した場合には、いずれの走者も進塁できないこと、および走者は正規に次塁に進塁するまでは元の塁を占有しているものとみなされることがその理由である。

【注】 走者一・三塁のとき三塁走者が三塁本塁間で挟撃され、妨害によってアウトを宣告された場合、一塁走者がその妨害行為発生以前に二塁を占めておれば、一塁走者には二塁の占有が許される。

(b) 守備側の権利優先

攻撃側チームのプレーヤー、ベースコーチまたはその他のメンバーは、打球あるいは送球を処理しようとしている野手の守備を妨げないように、必要に応じて自己の占めている場所(ダッグアウト内またはブルペンを含む)を譲らなければならない。

走者を除く攻撃側チームのメンバーが、打球を処理しようとしている野手の守備を妨害した場合は、ボールデッドとなって、打者はアウトになり、すべての走者は投球当時に占有していた塁に戻る。

走者を除く攻撃側チームのメンバーが、送球を処理しようとしている野手の守備を妨害した場合は、ボールデッドとなって、そのプレイの対象であった走者はアウトとなり、他のすべての走者は妨害発生の瞬間に占有していた塁に戻る。

【原注】 守備側の妨害とは、投球を打とうとする打者を妨げたり、邪魔をする野手の行為をいう。

【注】 たとえば、プレーヤーが2本のバットを持って次打者席に入っていたとき、打者がファウル飛球を打ち、これを捕手が追ってきたので、そのプレーヤーは1本のバットを持って場所を譲ったが、捕手は取り残されたバットにつまずいたために、容易に捕らえることができたはずのファウル飛球を捕らえることができなかったような場合、プレーヤーの取り残したバットが、明らかに捕手の捕球を妨げたと審判員が判断すれば、打者はアウトになる。

(c) 捕手の妨害

捕手またはその他の野手が、打者を妨害(インターフェア)した場合、打者は走者となり、アウトにされるおそれなく、安全に一塁が与えられる。(ただし、打者が一塁に進んで、これに触れることを条件とする)

しかし、妨害にもかかわらずプレイが続けられたときには、攻撃側チームの監督は、そのプレイが終わってからただちに、妨害行為に対するペナルティの代わりに、そのプレイを生かす旨を球審に通告することができる。

ただし、妨害にもかかわらず、打者が安打、失策、四球、死球、その他で一塁に達し、しかも他の全走者が少なくとも1個の塁を進んだときは、妨害とは関係なく、プレイは続けられる。

【原注】 捕手の妨害が宣告されてもプレイが続けられたときは、そのプレイが終わってからこれを生かしたいと監督が申し出るかもしれないから、球審はそのプレイを継続させる。
打者走者が一塁を空過したり、走者が次塁を空過しても、〔5.06b3付記〕に規定されているように、塁に到達したものとみなされる。
監督がプレイを選ぶ場合の例。
① 1アウト走者三塁、打者が捕手に妨げられながらも外野に飛球を打ち、捕球後三塁走者が得点した。監督は、打者アウトで得点を記録するのと、走者三塁、一塁(打者が打撃妨害により出塁)とのいずれを選んでもよい。
② 0アウト走者二塁、打者は捕手に妨げられながらもバントして走者を三塁に進め、自らは一塁でアウトになった。監督は0アウト走者二塁、一塁とするよりも走者三塁で1アウトとなる方を選んでもよい。
三塁走者が盗塁またはスクイズプレイにより得点しようとした場合のペナルティは、6.01(g)に規定されている。
投手が投球する前に、捕手が打者を妨害した場合、打者に対する妨害とは考えられるべきではない。このような場合には、審判員は〝タイム〟を宣告して〝出発点〟からやり直させる。

【注1】 監督がプレイを生かす旨を球審に通告するにあたっては、プレイが終わったら、ただちに行なわなければならない。なお、いったん通告したら、これを取り消すことはできない。

【注2】 監督がペナルティの適用を望んだ場合、次のとおり解釈できる。
捕手(または他の野手)が打者を妨害した場合、打者には一塁が与えられる。三塁走者が盗塁またはスクイズによって得点しようとしたときに、この妨害があった場合にはボールデッドとし、三塁走者の得点を認め、打者には一塁が与えられる。
三塁走者が盗塁またはスクイズプレイで得点しようとしていなかったときに、捕手が打者を妨害した場合にはボールデッドとし、打者に一塁が与えられ、そのために塁を明け渡すことになった走者は進塁する。盗塁を企てていなかった走者と塁を明け渡さなくてもよい走者とは、妨害発生の瞬間に占有していた塁にとめおかれる。

(d) 競技場内に入ることを公認された人の妨害

競技場内に入ることを公認された人(試合に参加している攻撃側メンバーまたはベースコーチ、そのいずれかが打球または送球を守備しようとしている野手を妨害した場合、あるいは審判員を除く。)が競技を妨害したとき、その妨害が故意でないときは、ボールインプレイである。

しかし故意の妨害のときには、妨害と同時にボールデッドとなり、審判員は、もし妨害がなかったら競技はどのような状態になったかを判断して、ボールデッド後の処置をとる。(4.07a参照)

【原注】 本項で除かれている攻撃側メンバーまたはベースコーチが、打球または送球を守備しようとしている野手を妨害した場合については、6.01(b)参照。審判員による妨害については5.06(c)(2)、同(6)および5.05(b)(4)、走者による妨害については5.09(b)(3)参照。
妨害が故意であったか否かは、その行為に基づいて決定しなければならない。
たとえば、バットボーイ、ボールボーイ、警察官などが、打球または送球に触れないように避けようとしたが避けきれずに触れた場合は、故意の妨害とはみなされない。しかしボールを拾い上げたり、捕ったり、意図的に触れたりすることや、押し戻したり、蹴ったりすれば、この行為は故意の妨害とみなされる。
例──打者が遊撃手にゴロを打ち、それを捕った遊撃手が一塁に悪送球した。一塁ベースコーチは送球に当たるのを避けようとしてグラウンドに倒れ、悪送球を捕りに行こうとした一塁手と衝突した。打者走者は三塁まで到達した。妨害を宣告するかどうかは審判員の判断による。コーチが妨害を避けようとしたが避けきれなかったと判断すれば、妨害を宣告してはならない。

(e) 観衆の妨害

打球または送球に対して観衆の妨害があったときは、妨害と同時にボールデッドとなり、審判員は、もし妨害がなかったら競技はどのような状態になったかを判断して、ボールデッド後の処置をとる。

【規則説明】 観衆が飛球を捕らえようとする野手を明らかに妨害した場合には、審判員は打者に対してアウトを宣告する。

【原注】 打球または送球がスタンドに入って観衆に触れたら、たとえ競技場内にはね返ってきてもボールデッドとなる場合と、観衆が競技場内に入ったり、境界線から乗り出すか、その下またはあいだをくぐり抜けてインプレイのボールに触れるか、あるいはプレーヤーに触れたり、その他の方法で妨げた場合とは事情が異なる。後者の場合は故意の妨害として取り扱われる。打者と走者は、その妨害がなかったら競技はどのような状態になったかと審判員が判断した場所におかれる。
野手がフェンス、手すり、ロープから乗り出したり、スタンドの中へ手を差し伸べて捕球するのを妨げられても妨害とは認められない。野手は危険を承知でプレイしている。しかし、観衆が競技場に入ったり、身体を競技場の方へ乗り出して野手の捕球を明らかに妨害した場合は、打者は観衆の妨害によってアウトが宣告される。
例──1アウト走者三塁、打者が外野深く飛球(フェアかファウルかを問わない)を打った。観衆がそれを捕球しようとする外野手を明らかに妨害した。審判員は観衆の妨害によるアウトを宣告した。その宣告と同時にボールデッドとなり、審判員は打球が深かったので、妨害されずに野手が捕球しても捕球後三塁走者は得点できたと判断して、三塁走者の得点を認める。本塁からの距離が近いほんの浅いフライに対しては、妨害があっても、このような処置をとるべきではない。

(f) コーチ及び審判員の妨害

送球が偶然ベースコーチに触れたり、投球または送球が審判員に触れたときも、ボールインプレイである。しかし、ベースコーチが故意に送球を妨害した場合には、走者はアウトとなる。

【原注】 審判員の妨害は、(1)盗塁を阻止しようとしたり、塁上の走者をアウトにしようとする捕手の送球動作を、球審が邪魔したり、はばんだり、妨げた場合、(2)打球が、野手(投手を除く)を通過する前に、フェア地域で審判員に触れた場合に起こる。
捕手の送球動作には、投手の返球も含む。

(g) スクイズプレイまたは本塁の妨害

3塁走者が、スクイズプレイまたは盗塁によって得点しようと試みた場合、捕手またはその他の野手がボールを持たないで、本塁の上またはその前方に出るか、あるいは打者または打者のバットに触れたときには、投手にボークを課して、打者はインターフェアによって一塁が与えられる。この際はボールデッドとなる。

【注1】 捕手がボールを持たないで本塁の上またはその前方に出るか、あるいは打者または打者のバットに触れた場合は、すべて捕手のインターフェアとなる。
特に、捕手がボールを持たないで本塁の上またはその前方に出た場合には、打者がバッタースボックス内にいたかどうか、あるいは打とうとしたかどうかには関係なく、捕手のインターフェアとなる。また、その他の野手の妨害というのは、たとえば、一塁手などが著しく前進して、投手の投球を本塁通過前にカットしてスクイズプレイを妨げる行為などを指す。

【注2】 すべての走者は、盗塁行為の有無に関係なく、ボークによって1個の塁が与えられる。

【注3】 本項は、投手の投球が正規、不正規にかかわらず適用される。

【注4】 投手が投手板を正規に外して走者を刺そうと送球したときには、捕手が本塁上またはその前方に出ることは、正規なプレイであって、打者がこの送球を打てば、かえって打者は守備妨害として処置される。

(h) オブストラクション

オブストラクションが生じたときには、審判員は〝オブストラクション〟を宣告するか、またはそのシグナルをしなければならない。

(1) 走塁を妨げられた走者に対しプレイが行われている場合、または打者走者が一塁に触れる前にその走塁を妨げられた場合には、ボールデッドとし、塁上の各走者はオブストラクションがなければ達しただろうと審判員が推定する塁まで、アウトのおそれなく進塁することが許される。

走塁を妨げられた走者は、オブストラクション発生当時すでに占有していた塁よりも少なくとも1個先の進塁が許される。

走塁を妨げられた走者が進塁を許されたために、塁を明け渡さなければならなくなった前位の走者(走塁を妨げられた走者より)は、アウトにされるおそれなく次塁へ進むことが許される。

【付記】 捕手はボールを持たないで、得点しようとしている走者の進路をふさぐ権利はない。塁線(ベースライン)は走者の走路であるから、捕手は、まさに送球を捕ろうとしているか、送球が直接捕手に向かってきており、しかも十分近くにきていて、捕手がこれを受け止めるにふさわしい位置を占めなければならなくなったときか、すでにボールを持っているときだけしか、塁線上に位置することができない。

【原注】 走塁を妨げられた走者に対してプレイが行なわれている場合には、審判員は〝タイム〟を宣告するときと同じ方法で、両手を頭上にあげてオブストラクションのシグナルをしなければならない。オブストラクションのシグナルが行なわれたときは、ただちにボールデッドとなる。しかし、審判員のオブストラクションの宣告がなされる前に、野手の手を離れていたボールが悪送球となったときには、オブストラクションが発生しなければ、その悪送球によって当然許されるはずの塁がその走者に与えられるべきである。走者が二塁三塁間で挟撃され、すでに遊撃手からの送球がインフライトの状態のときに、三塁へ進もうとした走者が三塁手に走塁を妨げられたとき、その送球がダッグアウトに入った場合、その走者には本塁が与えられる。この際、他の走者に関しては、オブストラクションが宣告される以前に占有していた塁を基準として2個の塁が与えられる。

【注1】 内野手におけるランダウンプレイ中に走者が走塁を妨げられたと審判員が判断した場合はもちろん、野手が、走者(一塁に触れた後の打者走者を含む)をアウトにしようとして、その走者が進塁を企てている塁へ直接送球していたときに、その走者が走塁を妨げられたと審判員が判断した場合も同様、本項が適用される。

【注2】 たとえば、走者二・三塁のとき、三塁走者が投手に追い出されて三塁本塁間で挟撃され、この間を利して二塁走者は三塁に達していたところ、挟撃されていた走者が三塁へ帰ってきたので二塁走者は元の塁へ戻ろうとし、二塁三塁間で挟撃された。しかし、このランダウンプレイ中に二塁走者はボールを持たない二塁手と衝突したような場合、審判員が二塁手の走塁妨害を認めれば〝オブストラクション〟を宣告し、ボールデッドとして、二塁走者を三塁へ、三塁走者を本塁へ進める処置をとる。

【注3】 たとえば、走者一塁、打者が左翼線に安打したとき、左翼手は一塁走者の三塁への進塁をはばもうとして三塁へ送球したが、一塁走者は二塁を越えたところでボールを持たない遊撃手と衝突したような場合、審判員が遊撃手の走塁妨害を認めれば、オブストラクションを宣告して、ボールデッドにし、一塁走者に三塁の占有を許す。打者については、審判員がオブストラクション発生時の状況を判断して、二塁へ達したであろうとみれば二塁の占有を許すが、二塁へ進めなかったとみれば一塁に留める。

【注4】 たとえば、走者一塁、打者が一ゴロしたとき、ゴロをとった一塁手は一塁走者をフォースアウトにしようと二塁へ送球したが、一塁へ向かっている打者と一塁へ入ろうとした投手とが一塁の手前で衝突したような場合、審判員が投手の走塁妨害を認めれば、オブストラクションを宣告して、ボールデッドにする。この際、審判員がオブストラクションよりも二塁でのフォースアウトが後に成立したと判断したときには、打者走者を一塁に、一塁走者を二塁に進める。これに反して、オブストラクションより二塁でのフォースアウトが先に成立していたと判断したときには、打者走者の一塁占有を認めるだけで、一塁走者の二塁でのフォースアウトは取り消さない。

(2) 走塁を妨げられた走者に対してプレイが行なわれていなかった場合には、すべてのプレイが終了するまで試合は続けられる。審判員はプレイが終了したのを見届けた後に、初めて〝タイム〟を宣告し、必要とあれば、その判断で走塁妨害によってうけた走者の不利益を取り除くように適宜な処置をとる。

【原注】 本項規定のようにオブストラクションによってボールデッドとならない場合、走塁を妨げられた走者が、オブストラクションによって与えようと審判員が判断した塁よりも余分に進んだ場合は、オブストラクションによる安全進塁権はなくなり、アウトを賭して進塁したこととなり、触球されればアウトになる。このアウトは、審判員の判断に基づく裁定である。

【注1】 たとえば、走者二塁のとき打者が左前安打した。左翼手は本塁をうかがった二塁走者をアウトにしようと本塁へ送球した。打者走者は一塁を越えたところで一塁手にぶつかったので、審判員は〝オブストラクション〟のシグナルをした。左翼手の本塁への送球は捕手の頭上を越す悪送球となったので、二塁走者はやすやすと得点することができた。オブストラクションを受けた打者走者はボールが転じているの見て二塁を越え、三塁をうかがったところ、ボールを拾った投手からの送球を受け三塁手に三塁到達前に触球されたような場合、審判員が、打者走者にはオブストラクションによって二塁しか与えることができないと判断したときには、三塁でのアウトは認められる。
これに反して、打者走者が三塁手の触球をかいくぐって三塁に生きたような場合、その三塁の占有は認められる。いずれの場合も、二塁走者の得点は認められる。

【注2】 たとえば、打者が三塁打と思われるような長打を放ち、一塁を空過した後、二塁を経て三塁に進もうとしたとき、遊撃手に妨げられて、三塁へ進むことができなかったような場合、審判員は、この反則の走塁を考慮することなく、妨害がなければ達したと思われる三塁へ進めるべきである。もし野手が打者の一空過を知ってアピールすれば、その打者はアウトになる。走塁の失敗はオブストラクションとはなんら関係がないからである。

(i) 本塁での衝突プレイ

(1) 得点しようとしている走者は、最初から捕手に接触しようとして、または避けられたにもかかわらず最初から接触をもくろんで走路から外れることはできない。もし得点しようとした走者が最初から捕手または野手に接触しようとしたと審判員が判断すれば、捕手がボールを保持していたかどうかに関係なく、審判員はその走者にアウトを宣告する。その場合、ボールデッドとなって、すべての他の走者は接触が起きたときに占有していた塁(最後に触れていた塁)に戻らなければならない。走者が正しく本塁に滑り込んでいた場合には、本項に違反したとはみなされない。

【原注】 走者が触塁の努力を怠って、肩を下げたり、手、肘または腕を使って押したりする行為は、本項に違反して最初から捕手と接触するために、または避けられたにもかかわらず最初から接触をもくろんで走路を外れたとみなされる。走者が塁に滑り込んだ場合、足からのスライディングであれば、走者の尻および脚が捕手または野手と接触する前に地面に落ちたとき、またヘッドスライディングであれば、捕手または野手が接触する前に走者の身体が先に地面に落ちたときは、正しいスライディングとみなされる。捕手または野手が走者の走路をブロックした場合は、本項に違反して走者が避けられたにもかかわらず接触をもくろんだということを考える必要はない。

(2) 捕手がボールを持たずに得点しようとしている走者の走路をブロックすることはできない。もし捕手がボールを持たずに走者の走路をブロックしたと審判員が判断した場合、審判員はその走者にセーフを宣告する。前記にかかわらず、捕手が送球を実際に守備しようとして走者の走路をふさぐ結果になった場合(たとえば、送球の方向、軌道、バウンドに反応して動いたような場合)には、本項に違反したとはみなされない。また、走者がスライディングすることで捕手との接触を避けられたならば、ボールを持たない捕手が本項に違反したとはみなされない。

本塁でのフォースプレイには、本項を適用しない。

【原注】 捕手が、ボールを持たずに本塁をブロックするか(または実際に送球を守備しようとしていないとき)、および得点しようとしている走者の走塁を邪魔するか、阻害した場合を除いて、捕手は本項に違反したとはみなされない。審判員が、捕手が本塁をブロックしたかどうかに関係なく、走者はアウトを宣告されていただろうと判断すれば、捕手が走者の走塁を邪魔または阻害したとはみなされない。また、捕手は、滑り込んでくる走者に触球するときには不必要かつ激しい接触を避けるために最大限の努力をしなければならない。滑り込んでくる走者と日常的に不必要なかつ激しい接触(たとえば膝、レガース、肘または前腕を使って接触をもくろむ)をする捕手はリーグ会長の制裁の対象となる。

【6.01i原注】 本項の〝捕手〟については、本塁のカバーに来た投手を含む野手にも適用される。

【注】 我が国では、本項の(1)(2)ともに、所属する団体の規定に従う。

(j)併殺を試みる塁へのスライディング

走者が併殺を成立させないために、〝正しいスライディング〟をせずに、野手に接触したり、接触しようとすれば、本条によりインターフェアとなる。

本条における〝正しいスライディング〟とは、次のとおりである。走者が、

(1) ベースに到達する前からスライディングを始め(先に地面に触れる)、

(2) 手や足でベースに到達しようとし、

(3) スライディング終了時は(本塁を除き)ベース上にとどまろうとし、

(4) 野手に接触しようとして走路を変更することなく、ベースに達するように滑り込む。

〝正しいスライディング〟をした走者は、そのスライディングで野手に接触したとしても、本条によりインターフェアとはならない。また、走者の正規の走路に野手が入ってきたために、走者が野手に接触したとしてもインターフェアにはならない。

前記にかかわらず、走者がロールブロックをしたり、意図的に野手の膝や送球する腕、上半身より高く足を上げて野手に接触したり、接触しようとすれば、〝正しいスライディング〟とはならない。

走者が本項に違反したと審判員が判断した場合、走者と打者走者にアウトを宣告する。その走者がすでにアウトになっている場合については、守備側がプレイを試みようとしている走者にアウトが宣告される。

【注】《新》我が国では、所属する団体の規定に従う。

6.02 投手の反則行為

(a) ボーク

塁に走者がいるときは、次の場合ボークとなる。

(1) 投手板に触れている投手が、5.07(a)(1)および(2)項に定める投球動作に違反した場合。

【原注】 左投げ、右投げ、いずれの投手でも自由な足を振って投手板の後縁を越えたら、打者へ投球しなければならない。ただし、二塁走者のピックオフプレイのために二塁へ送球することは許される。

(2) 投手板に触れている投手が、一塁または三塁に送球するまねだけして、実際に送球しなかった場合。

【注】 投手が投手板に触れているとき、走者のいる二塁へは、その塁の方向に直接ステップすれば偽投してもよいが、一塁または三塁と打者への偽投は許されない。投手が軸足を投手板の後方へ外せば、走者のいるどの塁へもステップしないで偽投してもよいが、打者にだけは許されない。

(3) 投手板に触れている投手が、塁に送球する前に、足を直接その塁の方向に踏み出さなかった場合。

【原注】 投手板に触れている投手は、塁に送球する前には直接その塁の方向に自由な足を踏み出すことが要求されている。投手が実際に踏み出さないで、自由な足の向きを変えたり、ちょっと上にあげて回したり、または踏み出す前に身体の向きを変えて送球した場合、ボークである。投手は、塁に送球する前に塁の方向へ直接踏み出さなければならず、踏み出したら送球しなければならない。(二塁については例外)
ランナー一・三塁のとき、投手が走者を三塁に戻すために三塁へ踏み出したが実際に送球しなかったら(軸足は投手板に触れたまま)、ボークとなる。

(4) 投手板に触れている投手が、走者のいない塁へ送球したり、送球するまねをした場合。

ただし、プレイの必要があればさしつかえない。

【原注】 投手が走者のいない塁へ送球したり、送球するまねをした場合、審判員は、それが必要なプレイかどうかを、走者がその塁に進もうとしたか、あるいはその意図が見られたかで判断する。

【問】 走者一塁のとき、走者のいない二塁に送球したり、または送球するまねをしたらボークか。

【答】 ボークである。しかし一塁走者が二塁に盗塁しようとしたのを防ぐ目的で、第1動作で二塁の方向に正しく自由な足を踏み出せば、ボークにならない。なお投手が投手板を正規に外せば、ステップをしないで送球してもかまわない。

(5) 投手が反則投球をした場合。

【原注】 クイックピッチは反則投球である。打者が打者席内でまだ十分な構えをしていないときに投球された場合には、審判員は、その投球をクイックピッチと判定する。塁に走者がいればボークとなり、いなければボールである。クイックピッチは危険なので許してはならない。

(6) 投手が打者に正対しないうちに投球した場合。

(7) 投手が投手板に触れないで、投球に関連する動作をした場合。

【問】 走者一塁のとき、投手が投手板をまたいだままストレッチを始めたがボールを落とした。ボークとなるか。

【答】 投手が投手板に触れないで、投球に関連する動作を起こしているからボークとなる。

(8) 投手が不必要に試合を遅延させた場合。

【原注】 本項は、6.02(c)(8)により警告を発せられたときは、適用されない。投手が遅延行為を繰り返して6.02(c)(8)により試合から除かれた場合には、あわせて本項のボークも課せられる。5.07(c)は、塁に走者がいないときだけ適用される。

(9) 投手がボールを持たないで、投手板に立つか、これをまたいで立つか、あるいは投手板を離れていて投球するまねをした場合。

(10) 投手が正規の投球姿勢をとった後、実際に投球するか、塁に送球する場合を除いて、ボールから一方の手を離した場合。

全日本軟式野球連盟 競技者必携

アマチュア野球内規

次回の第1打者

たとえば2アウト、打者のボールカウント1ボール2ストライク後の投球のときに、三塁走者が本盗を企てたが得点とならないで攻守交代になったような場合、次回の第1打者を明らかにするため、球審は、打者が三振でアウトになったのか、走者が触球されてアウトになったのかを明示しなければならない。(規則 5.04a(3)、5.09a(14))

バッタースボックスルール

  1. 打者は打撃姿勢をとった後は、次の場合を除き、少なくとも一方の足をバッタースボックス内に置いていなければならない。この場合は、打者はバッタースボックスを離れてもよいが、〝ホームプレートを囲む土の部分〟を出てはならない。
    1. 打者が投球に対してバットを振った場合。
    2. チェックスイングが塁審にリクエストされた場合。
    3. 打者が投球を避けてバランスを崩すか、バッタースボックスの外に出ざるを得なかった場合。
    4. いずれかのチームのメンバーが〝タイム〟を要求し認められた場合。
    5. 守備側のプレーヤーがいずれかの塁で走者に対するプレイを企てた場合。
    6. 打者がバントをするふりをした場合。
    7. 暴投または捕逸が発生した場合。
    8. 投手がボールを受け取った後マウンドの土の部分を離れた場合。
    9. 捕手が守備のためのシグナルを送るためキャッチャースボックスを離れた場合。
  2. 打者は、次の目的で〝タイム〟が宣告されたときは、バッタースボックスおよび〝ホームプレートを囲む土の部分〟を離れることができる。
    1. 負傷または負傷の可能性がある場合。
    2. プレーヤーの交代
    3. いずれかのチームの協議
    4. なお、審判員は、前の打者が塁に出るかまたはアウトになれば、速やかにバッタースボックスに入るよう次打者に促さねばならない。
  3. ペナルティ(1)・(2)
    • 打者が意図的にバッタースボックスを離れてプレイを遅らせ、かつ(1)の1)~9)の例外規定に該当しない場合、または、打者が意図的に〝ホームプレートを囲む土の部分〟を離れてプレイを遅らせ、かつ(2)の1)~3)の例外規定に該当しない場合、球審は、その試合で2度目までの違反に対しては警告を与え、3度目からは投手の投球を待たずにストライクを宣告する。この場合はボールデッドである。
    • もし打者がバッタースボックスまたは〝ホームプレートを囲む土の部分〟の外にとどまり、さらにプレイを遅延させた場合、球審は投手の投球を待たず、再びストライクを宣告する。
    • なお、球審は、再びストライクを宣告するまでに、打者が正しい姿勢をとるための適宜な時間を認める。(規則 5.04b(4)(A)、同(B))
ワインドアップポジションの投手

ワインドアップポジションをとった右投手が三塁(左投手が一塁)に踏み出して送球することは、投球動作を変更して送球したとみなされるから、ボークとなる。(規則 6.02a(1))

投手が投球動作を起こして両手を合わせた後、再び両手をふりかぶることは、投球を中断したものとみなされる。投球動作を起こしたときは、投球を完了しなければならない。(規則 5.07a(1))

最終回裏の決勝点

正式試合の最終回の裏かまたは延長回の裏に、規則 6.01(g)規定のプレイで三塁走者に本塁が与えられて決勝点になる場合には、打者は一塁に進む義務はない。(規則 5.08b、6.01g)

2アウト、四球暴投、決勝点で打者一塁へ進まず

最終回裏、走者三塁、打者の四球(フォアボール)目が暴投または捕逸となって決勝点が記録されるとき、四球の打者が一塁へ進まなかった場合は、規則5.08(b)のように球審が自ら打者のアウトを宣告して、得点を無効にすることはできない。

打者が一塁に進まないまま、守備側が何らの行為もしないで、両チームが本塁に整列すれば、四球の打者は一塁へ進んだものと記録される。

打者をアウトにするためには、両チームが本塁に整列する前に守備側がアピールすることが必要である(規則 5.09(c) [5.09c原注] [注 3])。しかし、守備側がアピールしても、打者は一塁への安全進塁権を与えられているので、打者が気づいて一塁に到達すれば、アピールは認められない。

守備側のアピールを認めて打者をアウトにする場合は、

  1. 打者が一塁に進もうとしないとき
  2. 打者が一塁に進もうとしたが途中から引き返したとき

である。(規則 5.08b、5.09c[5.09c原注] [注 3])

アウトの時機

アウトが成立する時機は、審判員が宣告したときではなくて、アウトの事実が生じたときである。第3アウトがフォースアウト以外のアウトで、そのアウトにいたるプレイ中に走者が本塁に達するときなどのように、状況によっては速やかにアウトを宣告しなければならない。(規則 5.08a[注 1])

アピールの場所と時期

守備側チームは、アピールの原因となった塁(空過またはリタッチの失敗)に触球するだけでなく、アピールの原因でない塁に進んでいる走者の身体に触球して、走者の違反を指摘して、審判員の承認を求める(アピール)ことができる。この場合、アピールを受けた審判員は、そのアピールの原因となった塁の審判員に裁定を一任しなければならない。

アピールは、ボールインプレイのときに行わなければならないので、ボールデッドのときにアピールがあった場合は、当該審判員は「タイム中だ」ということとする。(規則 5.09c)

ただし、最終回の裏ボールデッド中に決勝点が記録された場合、または降雨等で試合が中断され、そのまま試合が再開されない場合、ボールデッド中でもアピールはできるものとする。

審判員がインプレイのとき使用球を受け取る

3アウトと勘ちがいした守備側が、使用球を審判員に手渡したのを審判員が受け取った場合は、規則 6.01(d)を準用する。審判員が使用球を受け取ると同時にボールデッドとし、受け取らなかったらどのような状態になったかを判断して、ボールデッド後の処置をとる。また、ベースコーチが同様のケースで試合球を受け取った場合も、受け取ると同時にボールデッドとするが、走者はボールデッドになったときに占有していた塁にとどめる。(規則 6.01d)

打者の背後にウェストボールを投げる

投手がスクイズプレイを防ぐ目的で、意識的に打者の背後へ投球したり、捕手が意識的に打者の背後に飛び出したところへ投球したりするような非スポーツマン的な行為に対しても規則 6.01(g)を適用し、走者には本塁を与え、打者は打撃妨害で一塁へ進ませる。(規則 6.01g)

危険防止(ラフプレイ禁止)ルール

本規則の趣旨は、フェアプレイの精神に則り、プレーヤーの安全を確保するため、攻撃側および守備側のプレーヤーが意図的に相手に対して体当たりあるいは乱暴に接触するなどの行為を禁止するものである。

  1. タッグプレイのとき、野手がボールを明らかに保持している場合、走者は(たとえ走路上であっても)野手を避ける、あるいは減速するなどして野手との接触を回避しなければならない。
    1. 野手との接触が避けられた
    2. 走者は野手の落球を誘おうとしていた
    3. 野手の落球を誘うため乱暴に接触した
  2. と審判員が判断すれば、その行為は故意とみなされ、たとえ野手がその接触によって落球しても、走者にはアウトが宣告される。ただちにボールデッドとなり、他の走者は妨害発生時に占有していた塁に戻る。なお、走者の行為が極めて悪質な場合は、走者は試合から除かれる場合もある。(規則 6.01i(1))
  3. 次の場合には、たとえ身体の一部が塁に向かっていたとしても、走者には妨害が宣告される。
    1. 走者が、ベースパスから外れて野手に向かって滑ったり、または走ったりして野手の守備を妨げた場合(接触したかどうかを問わない)。
      《走者は、まっすぐベースに向かって滑らなければならない、つまり走者の身体全体(足、脚、腰および腕)が塁間の走者の走路(ベースパス)内に留まることが必要である。ただし、走者が、野手から離れる方向へ滑ったり、走ったりすることが、野手との接触または野手のプレイの妨げになることを避けるためであれば、それは許される。》
    2. 走者が体を野手にぶつけたりして、野手の守備を妨害した場合。
    3. 走者のスライディングの足が、立っている野手の膝より上に接触した場合および走者がスパイクの刃を立てて野手に向かってスライディングした場合。
    4. 走者がいずれかの足で野手を払うか、蹴った場合。
    5. たとえ野手がプレイを完成させるための送球を企てていなくても、走者がイリーガリーに野手に向かってスライドしたり、接触したりした場合。
  4. タッグプレイのとき、捕手または野手が、明らかにボールを持たずに塁線上および塁上に位置して、走者の走路をふさいだ場合は、オブストラクションが厳格に適用される。
    なお、捕手または野手が、たとえボールを保持していても、故意に足を塁線上または塁上に置いたり、または脚を横倒しにするなどして塁線上または塁上に置いたりして、走者の走路をふさぐ行為は、大変危険な行為であるから禁止する。同様の行為で送球を待つことも禁止する。このような行為が繰り返されたら、その選手は試合から除かれる場合もある。
    ペナルティ
    捕手または野手がボールを保持していて、上記の行為で走者の走路をふさいだ場合、正規にタッグされればその走者はアウトになるが、審判員は捕手または野手に警告を発する。走者が故意または意図的に乱暴に捕手または野手に接触し、そのためたとえ捕手または野手が落球しても、その走者にはアウトが宣告される。ただちにボールデッドとなり、他の走者は妨害発生時に占有していた塁に戻る。
    (規則 6.01h、6.01i(2))
投手の遅延行為

走者が塁にいるとき、投手が投手板から軸足をはずして、走者のいない塁に送球した(送球するマネも含む)場合、または、投手板上からでも軸足を投手板からはずしても、塁に入ろうとしていない野手に送球した場合には、投手の遅延行為とみなす。(規則 6.02a(4)、6.02a(8)、6.02c(8))

投球する手を口または唇につける

規則 6.02(c)(1)のペナルティに代えて、審判員はその都度警告してボールを交換させる。(規則 6.02c)

正式試合となる回数

審判員が試合の途中で打ち切りを命じたときに正式試合となる回数については、規則 7.01(c)に規定されているが、各種大会などでは、この規定の適用に関して独自の特別規則を設けることができる。

大会によっては、一定以上の得点差、たとえば、5回10点差、7回以降7点差など、得点差によってコールドゲームとし、正式試合とする特別規則もある。(規則 7.01c)